絶対権力者となった習近平が生む「脆弱だが暴力的」な中国の危険度
習近平は慣例を破り3期目に入るとされる XINHUA/AFLO
<半永久的に総書記を務めると見られる習近平だが、国内では歪みが拡大し、国際的には今後10年の中国は特に危険な存在となるだろう>
中国共産党の第19期中央委員会第6回全体会議(6中全会)が11月11日に閉幕した。4日間の非公開会議は、党の歴史を総括する「歴史決議」を採択。習近平(シー・チンピン)総書記(国家主席)を2人の偉大な党指導者、毛沢東と鄧小平に並ぶ存在と位置付けた。同会議では、誰もが知っている既定路線も再確認された。来年の党大会で習が次の5年間も総書記に再選され、その後も半永久的に党指導者を続けるという路線だ。
中国にとっての問題は、習が多くの問題の原因となった共産党の中央集権体制をさらに強化する気であること。世界の問題は、習が世界秩序の現状変更を図る一方、中国が柔軟性を失いつつあることだ。
中国の台頭と野心によって国際的な既成秩序が不安定化するなか、今後数十年は世界史上最も重要な時期の1つになりそうだ。習が任期を「無期限化」したのは、その事態に備えるためでもある。
習の権力はほぼ間違いなく盤石だが、あらゆる変化や成長は国内外で安定を脅かし、暴力的紛争のリスクを高める。習と党は、中央集権とイデオロギーへの服従が強さと安定を生むと信じている。習は自分によく似た「くまのプーさん」の写真投稿を禁止することで、中国の統一を維持するのだ。
習をはじめとする党指導部は、旧ソ連の崩壊をよく研究して2つの結論に達した。まず、ソ連の指導者は共産党支配に挑戦する人々への対応が甘かったということ。そして、「欧米の価値観」は党の支配を揺るがし、中国を不安定にするということだ。
ある時、アメリカの政治家がアメリカの優位性を守るため外国諜報機関から守るべき5つの技術を特定せよとCIAに求めたことがある。われわれはアメリカの優位性のカギは特定技術でなく、失われがちな開放性を守ることにある、と答えた。
中国の存亡にかかわるいくつも問題
だが、習は時間との競争を強いられている。不動産市場の崩壊リスク、非効率な投資、人口動態の変化と、中国は存亡の機につながりかねない問題をいくつも抱えている。また、経済成長が鈍化しているため、個人資産の増加で忠誠心と暗黙の支持を買うことはもうできない。
これらの問題を引き起こした元凶は政府と共産党の硬直性だが、習の対応は元凶をさらに強化することだった。
習は6中全会で、アジアの覇権国として、世界最高の経済・技術・軍事大国としてアメリカに取って代わろうと挑戦する権限を手にしたといえそうだ。
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