「今やアメリカの指導者は嘘つきで英雄などどこにもいない」元CIA工作員のコロナ在宅日記
しかし今、わが家の4人の子供たちはニュース番組を見ようとしない。感染拡大を否定し続け、その揚げ句に消毒液の注射を勧めたトランプら指導者を信用していないからだ。ウイルスに対する政府の不条理で無能で腐敗した反応は、分裂し、病んだ社会の象徴であり、その根源でもある。
新型コロナ危機が社会システムの機能不全を暴露するのではないかという懸念を、私の家族も感じている。今や指導者は嘘つきで、英雄なんてどこにもいない。
それでも今年11月の大統領選がアメリカの歴史で最も重要な選挙になることは、家族の誰もが認識している。「一票の重みが大きい激戦州に引っ越したら?」と、妻は冗談めかして子供たちに勧めている。
週に1回続けているギターのレッスンをリモートで受けたときのこと。画面に映った私を見て、先生は「その髪は誰が切ったの?」と聞いた。「マサチューセッツ工科大学(MIT)を出た妻です」と、私は答えた。教師はうなずいた。「いいね。彼女はフリーのヘアスタイリストになれるよ」
妻がはさみを手にしたのは、人に頼らずに暮らす試みの一環だった。そして、人々が距離を置かざるを得ない社会と政治の状況を示してもいた。
<本誌2020年6月9日号掲載>
2020年6月9日号(6月2日発売)は「検証:日本モデル」特集。新型コロナで日本のやり方は正しかったのか? 感染症の専門家と考えるパンデミック対策。特別寄稿 西浦博・北大教授:「8割おじさん」の数理モデル
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