嘘つき大統領トランプがアメリカの民主主義を打ち砕く
危機がどれほど深刻か、実例をいくつか挙げてみよう。
共和党は、少数派民族の選挙権を制限しようとする姿勢を強めている。同時に、大統領への権限集中を進めようとしているが、それは大統領が共和党出身者である限りにおいてだ。
トランプ、および移民政策を担当するスティーブン・ミラー大統領顧問ら側近は、「ディープ・ステート(国家の内部で国家を動かしている機関)」が公衆の安全や民主主義を危機にさらしている、と繰り返し非難してきた。だからこそ、米情報機関の一致した見解よりも、ロシアの主張や政策に寄り添うトランプは正しいという論法だ。
しかし、多くの米国民には知られていない事実だが、ディープ・ステートとはそもそもファシズムの概念だ。腐敗した政府や法律から人民を守れるのは強い指導者だけだとするこのイデオロギーが、1930年代のドイツで民主主義の破壊を正当化し、第二次大戦前の日本における軍国主義的体制を下支えした。
民主主義が腐り続ける
さらに、トランプ本人や政権高官の不法行為の告発、ウクライナ(とロシア)絡みのトランプの不法行為の証拠書類に関して、司法省は行動を起こすことを一貫して拒んでいる。ウィリアム・バー司法長官は、ディープ・ステートの中枢というCIAやFBIの「法律違反」の情報を提供するよう、外国の情報機関に呼び掛けるありさまだ。
司法省でも国務省でも、内国歳入庁(IRS)や財務省、CIA、国防総省、国土安全保障省でも、法に従って行動しようとする者はどんどん解任され、ホワイトハウスにすり寄る者たちが後任に据えられている。彼らはディープ・ステートを攻撃し、法を無視し、「指導者」のために権力を行使する。共和党多数の上院は見て見ぬふりで、政府は正常に機能していると主張するばかりだ。
法律の規定によれば、要求があった場合、財務省は下院に納税申告書を提出する義務がある。つまり、民主党議員の求めに従ってトランプの納税申告書は開示されるべきだ。にもかかわらず、スティーブン・ムニューシン財務長官は提出をひたすら拒否している。
法律では、召喚状で下院委員会での証言などを命じられた者は、それに従うことも定められている。だがマイク・ポンペオ国務長官は、ウクライナ疑惑に関する文書の提出を要求する召喚状に応じておらず、宣誓証言を要請されている国務省当局者5人が下院委員会で証言することも拒否した(5人のうち2人は要請に応じるという)。
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