コラム

都知事選、蓮舫候補の「二重国籍」問題の事実関係を改めて検証する

2024年06月20日(木)14時26分
蓮舫

6月19日、東京都知事選立候補予定者の共同記者会見に臨んだ蓮舫 Yuichi Yamazaki/Pool via REUTERS

<選挙の有力候補者には、様々なバッシングが行われるのが常だ。その全てを防ぐことは難しいが、民族マイノリティに対して候補者の適格性を謂れなく問うことは差別であり、他の誹謗中傷とは次元が異なる>

5月27日、立憲民主党の蓮舫参議院議員が、7月に行われる都知事選への出馬表明を行った。現職の小池百合子都知事との対決が話題になっている。東京都の行政改革に期待を寄せる声もある一方、様々なバッシングも生じている。そのバッシングの一つで、小池知事を支援する現職区議なども含め、ネットを中心に蒸し返されているのが、2016年に発生した蓮舫氏の「二重国籍疑惑」だ。

およそ大きな選挙があるとき、その有力候補者に対しては様々なバッシングが行われる。中には誹謗中傷や根拠のないデマを元にしたものもあるが、その全てを防ぐことは難しい。しかし、民族マイノリティに対して候補者の適格性を謂れなく問うことは差別であり、他の誹謗中傷とは次元が異なる。本日の公示を機に、「二重国籍疑惑」を振り返り、改めて蓮舫氏に「二重国籍」を問うことの不当性を確認しておきたい。


 

蓮舫氏は中国のために働いている?

台湾籍の父と日本国籍の母を持ち、東京都で生まれ育った蓮舫氏は、1985年に日本国籍を取得している。2016年に判明したのは、蓮舫氏の台湾籍が残ったままになっていたことだった。これがいわゆる「二重国籍」問題として批判されたのだ。

SNSや保守系雑誌などでは、蓮舫氏がダブルルーツを誇りにしていると述べた様々なインタビューが掘り起こされ、そこに自身が台湾の国籍を持っていることを示唆する発言もあったことなどから、蓮舫氏は「中国のために」働いているのであり(実際に蓮舫氏が持っていたのは台湾籍)、日本の議員として適格性を欠くという差別的な議論が行われていた。マスメディアはそれを非難することなく、蓮舫氏が「二重国籍」であったことをまるで重大な事件のように報道した。

今になっても、当時の「二重国籍疑惑」が蒸し返されている。たとえば、蓮舫氏の「二重国籍」の最初の発見者だと称する評論家は、蓮舫氏の都知事選への立候補表明とともに、立て続けに「二重国籍」に関係する記事を複数のネットメディアであげ続けている。また蓮舫氏の対抗馬となる小池知事の与党「都民ファースト」に所属する品川区議が、Xで「やはり、東京都知事は日本人にやって頂きたいな。」と投稿し、物議をかもした。6月11日、小池都知事への支援を表明した自民党に所属する千代田区議も、同じくXで「二重国籍問題は解決していないです。」と述べるなど、繰り返しこの話題を投稿し続けている。このような言説に振り回されてはいけない。

プロフィール

藤崎剛人

(ふじさき・まさと) 批評家、非常勤講師
1982年生まれ。東京大学総合文化研究科単位取得退学。専門は思想史。特にカール・シュミットの公法思想を研究。『ユリイカ』、『現代思想』などにも寄稿。訳書にラインハルト・メーリング『カール・シュミット入門 ―― 思想・状況・人物像』(書肆心水、2022年)など。
X ID:@hokusyu1982

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:「スウィフトノミクス」が幻想にすぎない訳

ワールド

焦点:少年院でギャングが勧誘、スウェーデンで増える

ビジネス

アングル:中国「白酒」が西側進出へ、メーカーは販売

ワールド

アングル:300%インフレのアルゼンチン、「主食」
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:小池百合子の最終章
特集:小池百合子の最終章
2024年7月 2日号(6/25発売)

「大衆の敵」をつくり出し「ワンフレーズ」で局面を変える小池百合子の力の源泉と日和見政治の限界

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド、意外な2位は?
  • 2
    キャサリン妃は「ロイヤルウェディング」で何を着たのか?...「お呼ばれドレス」5選
  • 3
    「地球温暖化を最も恐れているのは中国国民」と欧州機関の意識調査で明らかに...その3つの理由とは?
  • 4
    女性判事がナイトクラブで大暴れ! 胸が見えてもお構…
  • 5
    ミラノ五輪狙う韓国女子フィギュアのイ・ヘイン、セク…
  • 6
    ウクライナ戦闘機、ロシア防空システムを「無効化」.…
  • 7
    爆破され「瓦礫」と化したロシア国内のドローン基地.…
  • 8
    ガチ中華ってホントに美味しいの? 中国人の私はオス…
  • 9
    ロシアの人工衛星が軌道上で分解...多数の「宇宙ごみ…
  • 10
    「死刑囚だけど、会いたいから行ってるだけ」和歌山…
  • 1
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド、意外な2位は?
  • 2
    爆破され「瓦礫」と化したロシア国内のドローン基地...2枚の衛星画像が示す「シャヘド136」発射拠点の被害規模
  • 3
    ミラノ五輪狙う韓国女子フィギュアのイ・ヘイン、セクハラ疑惑で3年間資格停止に反論「恋人同士だった」
  • 4
    ガチ中華ってホントに美味しいの? 中国人の私はオス…
  • 5
    「大丈夫」...アン王女の容態について、夫ローレンス…
  • 6
    衛星画像で発見された米海軍の極秘潜水艇「マンタレ…
  • 7
    貨物コンテナを蜂の巣のように改造した自爆ドローン…
  • 8
    キャサリン妃は「ロイヤルウェディング」で何を着た…
  • 9
    ロシア軍部隊を引き裂く無差別兵器...米軍供与のハイ…
  • 10
    「地球温暖化を最も恐れているのは中国国民」と欧州…
  • 1
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド、意外な2位は?
  • 2
    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に
  • 3
    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア
  • 4
    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「…
  • 5
    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…
  • 6
    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車…
  • 7
    新型コロナ変異株「フラート」が感染拡大中...今夏は…
  • 8
    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…
  • 9
    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思ってい…
  • 10
    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story