コラム

政治資金改革を時間稼ぎの「政局的な話」としか考えていない自民党

2024年05月17日(金)10時42分

この発言がさらなる批判を招いたのはいうまでもない。れいわ新撰組の大石あきこ議員は、「いかに反省していないかって話。力削がなきゃいけないんですよ。その力の源泉は裏金だったわけじゃないですか」と反論。そもそもの出発点が自民党の裏金問題だったことを考えれば、鈴木議員の発言は極めて無責任であり、自民党の印象を更に悪化させる失言であった。

ところが当の鈴木議員はもちろん自民党執行部も、「自民党の力をそぐ」発言を問題視している形跡はみられないのだ。番組放映から一週間たとうとしている現在でも、この発言は撤回されていないし、鈴木議員は月曜日の政治討論番組にも出席しているのだ。

このことは、野党や世論が要求する厳しい政治資金規正法改革を、自民党は本当に自分たちの「力をそぐ」ための攻撃だと思っており、自分たちは「被害者」である。そのような「政局」に対して徹底抗戦するのは当然だと考えているということを物語っているのではないか。

政治改革を「政局的な話」に持ち込もうとしている自民党

実は4月23日、自民党が暫定的に示した政治改革案では、「出版、機関紙販売事業」「労働組合の政治活動および政治資金」の透明性のあり方が検討項目にあがっていた。「機関紙販売事業」は、「赤旗」の販売費を政党の主な資金源としている共産党を念頭においたものであり、「労働組合」とは、連合を主要な支持母体とする立憲民主党を念頭においたものだろう。驚くべきことに、自民党の裏金問題を発端とする政治資金改革機運のどさくさで、自民党は今回の裏金問題にはまったく関係がない機関紙や労働組合の政治活動を規制することで「野党の力をそぐ」ような「改革」を行おうとしているのだ。

立憲民主党の岡田幹事長は、このような自民党の動きに対して、自民党の裏金や政策活動費とは異なり、何が問題なのか具体的に示されていない機関紙や労働組合の話を盛り込むことで論点を無意味に広げることは、政治改革を今国会で行わせないための時間稼ぎであるとして批判している。しかし、果たしてそそのような深謀遠慮が自民党にあるのかは疑わしい。

プロフィール

藤崎剛人

(ふじさき・まさと) 批評家、非常勤講師
1982年生まれ。東京大学総合文化研究科単位取得退学。専門は思想史。特にカール・シュミットの公法思想を研究。『ユリイカ』、『現代思想』などにも寄稿。訳書にラインハルト・メーリング『カール・シュミット入門 ―― 思想・状況・人物像』(書肆心水、2022年)など。
X ID:@hokusyu1982

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story