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「高齢者は集団自決」で爆笑するな
このように考えたとき、成田氏の発言も問題なのだが、より深刻なのは、その発言がその場にいる番組の他の出演者に受け入れられてしまっていることだといえる。主に拡散されている『ABEMA Prime』の動画では、成田氏が高齢者の「集団自決」論を唱えたのち、スタジオは(リモートで参加していたひろゆき氏も含めて)爆笑の渦につつまれている。この発言自体が面白いというよりは、出演者はこれが成田氏の持論であることを知っていて、「いつもの発言」が出たことに起因する笑いだったようにも思えるが、冷静に考えて、これはジョークとして捉えられるだろうか?ブラックユーモアが強いバラエティであれば文脈によってはありうるかもしれない。だが、『ABEMA Prime』は仮にも報道番組をうたっているのだ。そのような番組が、果たして風刺や皮肉ですらない高齢者の「集団自決」論を冗談にしてよいのだろうか。
2016年、元フジテレビアナウンサーの長谷川豊氏が遺伝由来ではない人工透析患者は全額自己負担として払えないものは「そのまま殺せ!」とブログに書いて炎上したとき、長谷川氏はある番組に出演して、「人工透析患者を殺せと書いたら炎上したんですよ」と発言した。やはりスタジオは爆笑の渦に包まれていた。
今回、そのときと同じような薄ら寒さを覚えた。日本のメディアは、憎悪扇動の効果について、過小評価しているのではないか?もっとも、長谷川氏はその後全番組を降板することになったが、成田氏についてはその兆候はみられない。
「世代間格差」論の問題
年金保険料の負担や福祉の手厚さの充実度、金融資産の有無に関して、現役世代に比べて高齢者が優遇されているとする世代間格差の議論は、若者向け政策を取り扱う論者によってよく主張され、ネットメディアでは既成事実となりつつある。
しかし、たとえば子育てや教育といった予算を充実させるべきだとしても、高齢者福祉を削る必要はない。よほどの富裕層でもない限り?、高齢者福祉を削って自分の親を自己責任で面倒みるほうが現役世代にとっては負担が大きいだろう。また、なるほど金融資産の多くを保有しているのは高齢者だが、これは退職金の影響もあるし、積み立てられた資産は年齢が上がるほど大きくなるのは当然ということもある。そして、生活保護受給者が多いのもまた高齢者世代なのだ。
芸人で実業家のたかまつなな氏は、成田悠輔氏の「集団自決」発言を批判している。しかしたかまつなな氏自身も、高齢者の発言力が強すぎる「シルバー民主主義」が問題だという持論を持っており、昨年6月、年齢が上がれば上がるほど選挙での一票の価値が下がる「余命投票制度」の仕組みを導入すべきだと提言し、参政権の平等を無視しているとして批判を受けている。「世代間格差」の議論とは、結局のところこうした人権を無視するような極端な帰結にしか至りようがないということではないのか。
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