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アイヌ文化をカッコよく描いた人気漫画「ゴールデンカムイ」の功罪
さらに作者の野田サトルはインタビューで、アイヌ文化の保存に協力した和人として言語学者の金田一京助を挙げていた。しかし現在の研究では、金田一はアイヌについてむしろ積極的な同化主義者であったことが分かっている。アイヌ文化のディティールについての理解に比べてアイヌの歴史について無理解を示してしまっていることも、批判を集めている理由となっている。
子どもにも同化政策
もちろん、アイヌを取り扱った漫画すべてがアイヌの差別を過不足なく取り上げなければならないというわけではない。『ゴールデンカムイ』は社会派漫画ではなく、少年誌連載のピカレスク漫画だ。当事者への取材では、可哀そうなアイヌではなくカッコいいアイヌを描いてほしい、という要請もあったという。
しかしそうであっても、和人の作者がアイヌというテーマを扱うときは、迫害の歴史について無責任であってはならない。迫害はたいしたことはなかった、とか、アイヌを助けた和人もいた、というような、迫害の歴史に対する弁明になってしまうのは問題だ。
明治末期のアイヌは、明治以降の一連の政策によって土地を追われ、作中から想像されるよりはるかに強い同化圧力を受けていた。ヒロインのアシㇼパのようなアイヌの子供は特設された旧土人学校で同化教育を受けさせられていた。知里幸恵が『アイヌ神謡集』の序文で「おお亡びゆくもの......」と嘆いたのは、作中の時代からわずか10年あまり先のことだった。
確かに『ゴールデンカムイ』によってアイヌ文化への関心は高まったが、果たしてそれは博物館の陳列品を眺めるような、単なる趣味の域を超えるものとなったのだろうか。『ゴールデンカムイ』のファンの中には、先住民としてのアイヌの、現在進行形で生じている権利問題についてはむしろ勉強を拒絶している人も多い。それでは結局、これまでと何も変わらないのではないだろうか。
第七師団とアイヌ
筆者はかつて第七師団の司令部が置かれていた旭川市出身だ。祖父は志願兵として第七師団に所属していた。彼は生前、自身の軍隊経験について多くを語らなかったが、中国戦線に赴き、ノモンハンでの作戦に参加していたようだ。師団の母体は屯田兵で、旭山動物園の近くに旭川兵村記念館が置かれている。
旭川兵村記念館を訪れると、北海道開拓の苦難の歴史とともに、日露戦争やアジア太平洋戦争など、大日本帝国が行った戦争が肯定的に扱われている。記念館の入り口には、戦時中に戦意高揚に使われていた「加藤隼戦闘隊」の碑がある。
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