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ドラマ『相棒』の脚本家を怒らせた日本のある傾向
物語の結末では、非正規労働者を自分たちの利権のコマとしか思わない新自由主義思想の政治家に制裁が加えられる。それだけに、この労働運動を揶揄したシーンは完全に浮いており、SNSでは同様に不自然さを感じた人たちが太田愛のブログを読んで違和感の正体に気づき始めている。
現実の事例を冒涜する可能性も
『相棒スペシャル』の鉄道会社の子会社の労働問題というモチーフは、東京メトロの子会社メトロコマースの契約社員が正社員との待遇格差を訴え退職金の支払いを要求した、実際の訴訟事件をモデルにしていると考えられる。この訴訟は最高裁で、退職金支払い要求が退けられるという、原告にとって厳しい結果となってしまった。
太田愛のブログでは具体的な名前こそ挙げられていないものの、「自分たちと次の世代の非正規雇用者のために、なんとか、か細いながらも声をあげようとしている人々がおり、それを支えようとしている人々がいます。そのような現実を数々のルポルタージュを読み、当事者の方々のお話を伺いながら執筆しました」と書かれており、この訴訟事件に取材していることは間違いないだろう。
フィクションとはいえ、モデルとなった実在の事例があるにもかかわらず、当事者を揶揄するような演出をしてしまったことは余計に問題だ。脚本家を除いたスタッフ側に、労働運動の当事者を軽視するような意識があったのではないか。
市民運動をバカにする日本のフィクションと日本社会
『相棒スペシャル』に限らず、近年の日本のフィクションでは、社会運動、特にデモなどの直接行動をバカにする風潮がある。たとえば最近ドラマ化された『日本沈没』や、東日本大震災の政府対応に取材した映画『シン・ゴジラ』では、危機に対して実務的な対応をとる政府の邪魔をする集団として、市民運動が描かれていた。
これは、海外のドラマや映画ではあまりみない光景かもしれない。映画やドラマの作り手だけでなく、そもそも日本社会が直接行動の意義を認めていない傾向にある。日本以外の諸外国では、直接行動の重要性は失われていない。実際、地球温暖化問題を訴える若者のデモやBLM運動は世の中を変革している。しかし、日本の直接行動の参加者は、国外のそれと比べると一桁二桁少ないのが実情だ。
反五輪デモに対するデマも
1月1日に起きたこの事件の少し前、昨年の12月26日、NHKで放送されたドキュメンタリー『河瀬直美が見つめた東京五輪』で、反五輪デモの参加者が、お金を貰って動員されているとするテロップが流れた。また、その場面の映像を撮影した映画監督の島田角栄は、「本当に困っている反対派」とは別に「プロの反対派」がいるというコメントを残した。
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