コラム

エンジェル投資をする会社の基準は「応援したい」と「応援できる」

2021年04月13日(火)18時05分
藤野英人、佐々木紀彦

「お金のまなびば!」より

<日本に起業家が少ないことを嘆いているが、もしも起業の相談を受けたら全力で止める、とカリスマ投資家の藤野氏。そしてエンジェル投資をする会社には、異なる2つの明確な基準があるという>

ひふみ投信シリーズのファンドマネージャーとして知られる藤野英人氏と、お金や投資、経済について学んでいくYouTubeチャンネル「お金のまなびば!」

前回に引き続き、同チャンネルの動画「【藤野英人×佐々木紀彦】起業するなら今がチャンス!?チャンスだらけの日本は新たなフェーズへ」から、藤野氏と経済ニュースメディア「NewsPicks」元編集長・佐々木紀彦氏が語る、日本の未来と起業について取り上げる。

自分は「中学受験の否定派」だと言う藤野氏によると、日本で起業家が育たない理由の一因は教育現場にあるようだ。

「個々の教科には学ぶ意味があるが、勉強で評価されることは社会人になった瞬間、意味がなくなる。『自分はお前より頭がよい』と主張することは、百害あって一利なし」と、藤野氏は言う。

「ビジネスで最も大事なのは、人を幸せにして対価を得ること。『自分がすごい』から『あなたがすごい』への変換ができるかどうかで、人生は大きく差が出る。これこそ小中学校で教えるべきだ」

とりわけ教育者にはビジネス・経済を苦手とする人がとても多いと、藤野氏は残念がる。だがそんな中でも、既成概念を覆す次世代のスター候補も少なからず誕生しているようだ。

先日、藤野氏のもとに東京大学を卒業した起業家候補の若者が訪ねてきた。

彼にはピアノの才能があり、本当は東京藝術大学へ進学したい気持ちもあったが、将来的な収入や職業の選択肢などを考慮し東京大学を選択。しかし、「自分が本当にやりたいことではない」というジレンマを抱えることになる。

ある日、彼は「お金が稼げて」「やりたいこと」をビジネスにすればよいことに気が付いた。そこで目を付けたのが音楽ビジネス。なかでも昔からまったく変わらない教材や仕組みで運営されている音楽教室にインターネットを導入することにより、新たな音楽教育を再構築しようと思いついたのだ。

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「お金のまなびば!」より

「40~50年変わらないモデルが今も当たり前のように続いているビジネスは無数にある。特に日本は宝の山で、新たな市場を切り開く機会が山のように増えている」と、藤野氏は語る。

しかし、いくらチャンスが転がっていても、リスクを承知で挑戦する人がいなければ形にはならない。「NewsPicks」の元編集長で、現在は起業準備中の佐々木氏も挑戦者の1人だ。

「政治以外で日本を変えることができるのは、メディアと経済だと思った。メディアで起業すれば、経済にも影響を及ぼすことができる。起業はあくまで手段だ」

プロフィール

藤野英人

レオス・キャピタルワークス 代表取締役会長兼社長、CIO(最高投資責任者)
1966年富山県生まれ。国内・外資大手資産運用会社でファンドマネージャーを歴任後、2003年にレオス・キャピタルワークスを創業。日本の成長企業に投資する株式投資信託「ひふみ投信」シリーズを運用。投資啓発活動にも注力しており、東京理科大学MOT上席特任教授、早稲田大学政治経済学部非常勤講師、日本取引所グループ(JPX)アカデミーフェロー、一般社団法人投資信託協会理事を務める。主な著書に『投資家みたいに生きろ』(ダイヤモンド社)、『投資家が「お金」よりも大切にしていること』(星海社新書)、『さらば、GG資本主義――投資家が日本の未来を信じている理由』(光文社新書)、『「日経平均10万円」時代が来る!』(日経BP 日本経済新聞出版)など。

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