コラム

エンジェル投資をする会社の基準は「応援したい」と「応援できる」

2021年04月13日(火)18時05分

自分が理解できない会社への投資はただのギャンブル

藤野氏自身も、ファンドマネージャーから経営者になったことで経営者に対する尊敬の念が増したというが、当然起業はメリットばかりではない。

「起業しないほうがよい理由も100言えるので、起業したい人から相談を受けたら全力で止める話をする。それで辞めるなら、そのほうが相手のためになるから。でも、損得感情抜きで『やりたい』という力は誰にも止められない」

そんなエネルギーに満ちた起業家たちに数多く出会う藤野氏だが、エンジェル投資(創業後間もない企業への資金援助)をする会社には、明確な2つの基準があるという。

「1つは、応援したい会社・人であること。自分自身が好きであり、共感できるビジネスや経営者のことで、当然『儲かりそう』も大事。儲からないと思っていたら相手にも失礼だから」

もう1つは、応援できる会社・人であること。ポイントは、その会社の経営者が急病などにより数カ月休んだとき、代わりにその会社を守れる自信があるかどうかだという。

「顧客や仕入先、株主、リスクのイメージが湧かないと社長はできないので、自分がその会社のことを理解していることが大事。理解・関与できない会社に投資するのはただのギャンブル。その会社が危なくなったとき、指を加えてただ見ているだけになってしまう」

起業も投資も、本質は「人を幸せにすること」にある。社会全体の幸福度が上がらないと、リターンは返ってこないからだ。これを理解できるか否かで、起業や投資の成功確率が決まる。

構成・酒井理恵

●YouTubeチャンネル「お金のまなびば!」

プロフィール

藤野英人

レオス・キャピタルワークス 代表取締役会長兼社長、CIO(最高投資責任者)
1966年富山県生まれ。国内・外資大手資産運用会社でファンドマネージャーを歴任後、2003年にレオス・キャピタルワークスを創業。日本の成長企業に投資する株式投資信託「ひふみ投信」シリーズを運用。投資啓発活動にも注力しており、東京理科大学MOT上席特任教授、早稲田大学政治経済学部非常勤講師、日本取引所グループ(JPX)アカデミーフェロー、一般社団法人投資信託協会理事を務める。主な著書に『投資家みたいに生きろ』(ダイヤモンド社)、『投資家が「お金」よりも大切にしていること』(星海社新書)、『さらば、GG資本主義――投資家が日本の未来を信じている理由』(光文社新書)、『「日経平均10万円」時代が来る!』(日経BP 日本経済新聞出版)など。

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