コラム

SNSとビッグデータから生まれたソウル市「深夜バス」

2015年10月07日(水)18時01分

 
オープンデータプラザサイト

ソウル特別市のオープンデータプラザ 市に集まった公共データを広く利活用してもらうためデータとAPIを公開している。

「ソーシャル特別市」を目指すソウル市のSNS活用
ソウル市は今年7月、「ソウル市ソーシャルメディア白書」を発行した。SNSを介して行われた、市民と市のコミュニケーションの記録である。

 2008年のブログ開設から始まったソウル市のソーシャルメディアは、2009年Twitter、2010年Facebook、2013年KakaoStory(無料メッセンジャーKakao Talkユーザーが使うミニブログ)、2014年Instagramに公式IDを作り、市民とやりとりしている。白書によると、2012年11月から2014年12月まで、ソウル市の公式ID宛に寄せられた市民のメッセージは2万8289件、ソウル市のフォロワーはSNSすべて合わせて約39万人だった。

 通常、SNSではTwitterやFacebookで同じ情報を発信することが多いが、ソウル市はSNSを使い分けている。災害関連緊急メッセージはTwitter、より詳細に伝えたいことがある時はFacebook、ソウル市の各種イベントの写真はInstagram、といった具合だ。市民はソウル市のSNSからイベント情報、地域情報、旅行情報を得るため、また市内で経験した不便な点を直してもらう苦情受付窓口として使うためフォローしている。

 ソウル市は白書を通じて、「SNSの中に人がいる。市民のことを知るため、市民の多様な意見を政策に反映するため、SNSを活用している。ソーシャルメディア白書は、市民とのコミュニケーションに悩んでいる行政担当者にとって良き資料になるだろう」と明かした。

 日本でも行政機関がTwitterやFacebookなどSNSを使って情報を発信することが流行っている。しかしなかには1年以上も更新がストップしていたり、一方的な告知や宣伝ばかりで市民の意見を汲み取るコミュニケーションになっていなかったりと、上手く活用している事例はそれほど多くない。SNSのIDはひと通り作ったものの、つぶやきを行政にどう反映したらいいのかさっぱりわからないという自治体の担当者にとって、ソウル市は良い事例研究の対象になるのではないだろうか。

プロフィール

趙 章恩

韓国ソウル生まれ。韓国梨花女子大学卒業。東京大学大学院学際情報学修士、東京大学大学院学際情報学府博士課程。KDDI総研特別研究員。NPOアジアITビジネス研究会顧問。韓日政府機関の委託調査(デジタルコンテンツ動向・電子政府動向・IT政策動向)、韓国IT視察コーディネートを行っている「J&J NETWORK」の共同代表。IT情報専門家として、数々の講演やセミナー、フォーラムに講師として参加。日刊紙や雑誌の寄稿も多く、「日経ビジネス」「日経パソコン(日経BP)」「日経デジタルヘルス」「週刊エコノミスト」「リセマム」「日本デジタルコンテンツ白書」等に連載中。韓国・アジアのIT事情を、日本と比較しながら分かりやすく提供している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story