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サウジアラビア人社長の日本愛が創る「日本の中東ソフトパワー」
ヒジャブを身に付けた女性アニメクリエイター:マンガプロダクションズ株式会社写真提供
<日本アニメが中東、特にサウジアラビアで文化的橋渡しを果たし、両国間の精神性共有とソフトパワー展開の新局面を迎える。グレンダイザー巨像が象徴する文化交流の時代が始まった>
サウジアラビアにグレンダイザーの巨像が立っていることを知らない日本人も多いだろう。しかし、これは紛れもない現実であり、我々は中東地域に起きている文化的変化を真正面から受け止めるべきだ。
日本アニメはその文化的変化を創り出している中心の一つだ。
グレンダイザーの巨像はサウジアラビアの「ブルーバード・ワールド」という複合エンターテイメント施設の中にそびえ立っている。近年、サウジアラビアはアニメやゲームなどのエンターテイメント産業を中心とした産業育成方針を掲げており、国民の間でも日本のアニメ産業の人気は爆発的に拡大している。
日本アニメ、中東での文化的影響力を拡大
日本政府はクールジャパン政策を掲げて、日本のアニメ文化を基幹コンテンツとして海外マーケットに展開してきた。そして、民間事業者のアニメコンテンツのグローバルなブランド展開の挑戦してきた経緯がある。Netflixなどのプラットフォーマーの影響もあり、今や海外のアニメ市場規模は日本のアニメ市場規模とほぼ同等にまで拡大しつつある。
特に、新興アニメ市場として注目されるサウジアラビアでは、インターネットを通じたアニメ視聴者数は2017年で約40万人であったが、2022年には約1300万人に拡大している。同国アニメ市場は僅か5年で30倍以上の視聴者数に増加したということだ。さらに、アラブ世界全体では約6000万人弱のアニメ視聴者が存在しており、今後日本の人口に匹敵するアニメ市場が形成されることは間違いない。
筆者の狭い了見では、欧米諸国や東アジア・東南アジア地域などが日本のアニメ市場のメインターゲットであると思い込んでいた。しかし、実は人口が爆発的に増加しつつある中東地域・イスラム圏こそが日本のアニメのフロンティアとなっているのだ。
サウジアラビアにおける日本アニメの急成長
筆者が中東地域における日本の文化的ソフトパワー拡大の可能性を調べる中で一際目を引いたアニメ作品がある。それは2021年に公開された「ジャーニー 太古アラビア半島での奇跡と戦いの物語」という映画だ。
同作品は日本の東映アニメーションとサウジアラビア企業のマンガプロダクションズの合作であり、オランダのセプティミウス映画祭で最優秀エクスペリメンタルシネマ賞を受賞している。国際的に高い評価を得た作品と言えるだろう。
ただし、筆者が注目したポイントは、サウジアラビアが創ったアニメ映画が国際的なショーを受賞した、という表面的なことではなく、その映画のデザイン性・ストーリー性に強い日本に対するリスペクトを感じた点にある。
ハリウッド映画に顕著であるが、海外で制作されたアニメは日本のアニメファンが自然と馴染めるテイストにはなっていない。これは中国や韓国などの日本のアニメ制作の下請けから発展してきた地域のアニメでも同じだ。アニメを子ども用の娯楽と低く見る傾向や商業面を意識した見た目重視のキャラクターを推す作品群には、幼少期から日本アニメの深みに親しんできた筆者にはどこか馴染めないものがある。
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