全人代「一見」対米配慮の外商投資法
本当は中国自身も、豚の餌にする大豆が不足して豚が痩せてしまい困窮していたという国内事情がったのだが、あたかもトランプに救いの手を差し伸べるような格好をしたわけである。
同様に外商投資法制定とネガティブリストの公布も、トランプの「アメリカ・ファースト」の煽りであるとはいえ、中国の国内事情を反映したものであった。必ずしもトランプを喜ばせようという対米配慮ではなかった。
しかし、いずれもがトランプが喜ぶ結果を招いており、2月に入るとトランプは「90日間宣告」の期間を引き延ばしてもいいと言い始めている。昨年12月1日にアルゼンチンで行なわれた米中首脳会談で「3月1日までに米中が合意しなければ、年間輸入総額2000億ドル規模の中国製品に対する追加関税率を10%から25%に引き上げる」とした「90日間宣告」のことである。
それどころか、全人代が終わる今月中旬以降に、トランプは習近平を又もやフロリダの別荘に招いて「手打ち」をしようと持ちかけてきたではないか。
トランプ自身にとっては「外交失点」と位置付けているであろう米朝首脳会談の失点を補いたいというトランプの心理も働いているではあろうが、中国の腰を低くした「一見、対米配慮」戦略が、功を奏し始めていると判断すべきだろう。
なお、現在開催中の全人代に関しては、このあとGDP成長率や国防予算あるいは「中国製造2025」の位置づけと扱いなど、順次分析し発信していくつもりである。
[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』(2018年12月22日出版)、『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』(中英文版も)、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』など多数。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。