最新記事

対中投資

全人代「一見」対米配慮の外商投資法

2019年3月7日(木)13時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

まず「参入前内国民待遇」とは、外資が導入される段階で、「内国民(ないこくみん)待遇」(National Treatment)を適用することで、外資を導入する国が内資に劣らない待遇を外資に対しても適用する。言い換えれば、自国民と同様の権利を相手国の国民や企業に対しても保障することである。

この待遇には例外が許され、一般的にネガティブリストを利用し、国内の産業事情の観点から重点的に注目する業界や分野をリストに入れ、一定の形式で進出を制限する。ネガティブリストに入れていない業界や分野では外資を制限してはならないことになっている。

「ネガティブリスト」とは「外商投資参入特別管理措置」のことで、昨年12月25日、中国共産党中央委員会と国務院の承認を受けて、国家発展改革委員会と商務部は、国内外の投資家が投資を制限・禁止される分野を特定した全国版の「市場参入ネガティブリスト」を公布し、全面実施に踏み切った。市場の参入ルールをすべての投資家の間で統一し、透明化することが狙いだ。

これに関して、3月4日、全人代の 張業遂報道官は、「外国投資者の普遍的な関心である徴収・補償、知的財産権の保護、技術移転などの問題に関して、外商投資法には明確な保護規定が盛り込まれている」と述べている。

トランプが90日制限を延期したわけ

2月14日のコラム<米中交渉――中国「技術移転強制を禁止」するも「中国製造2025」では譲らず>で触れたように、全人代常務委員会は2018年12月23日に初めて外商投資法法案を提起している。続けて12月25日にはネガティブリストの公布と実施に踏み切ったわけだ。

そして今年1月31日、習近平国家主席は劉鶴副首相に親書を持たせて、ワシントンでトランプ大統領に渡し、トランプの泣き所である「アメリカ産大豆を500万トン多く買ってもいいよ」と申し出るという手段に出た。アメリカ産大豆の輸出先の60%は中国が占めており、大豆生産者はトランプの大票田である。ところが中国が報復関税として25%もの高関税をアメリカ産大豆にかけたものだから、大票田だったアメリカの大豆生産者たちは大きな痛手を受けトランプを恨むようになった。トランプ大統領にとっては非常に痛いしっぺ返しとなっていたことを計算しての妥協策だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米、両面型太陽光パネル輸入関税免除を終了 国内産業

ビジネス

米NY連銀総裁、インフレ鈍化を歓迎 「利下げには不

ビジネス

日本生命、米同業のコアブリッジに6000億円出資 

ビジネス

ホンダ、電動化とソフトへ投資倍増 30年度までに1
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 3

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 4

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇…

  • 5

    マーク・ザッカーバーグ氏インタビュー「なぜAIを無…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    それでもインドは中国に勝てない...国内企業の投資意…

  • 8

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 9

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 10

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中