オーストラリアの診察室から
オーストラリアの孤独問題について
日本でも話題になっていますが、人々、特に若者の孤立と孤独は、オーストラリアが直面している重大な社会問題の一つです。
孤独は、人々の健康と幸福に深刻な影響を及ぼすことが研究で明らかにされており、社会的なつながりの重要性が指摘されています。オーストラリアの若者たちが直面する孤独感は、世界中で関心がもたれている社会問題です。デジタル時代の進展とともに、若者たちはますます孤立していると感じています。SNSの普及が人々を繋げる一方で、現実世界でのつながりを希薄にしているという矛盾を抱えています。現在の情報過多の社会が問題を増幅させているという意見もあります。
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オーストラリアでも仕事などで新しい場所に引っ越し、知り合いができないという人も多いようです。仕事が忙しく、仕事以外で人と知り合う機会がないという人もいるようです。コロナによるロックダウンがこの孤独問題をさらに悪化させました。
社会的なつながりの欠如は、若者たちの精神衛生に深刻な影響を及ぼす可能性があります。孤独は、不安やうつ病といった精神的問題を引き起こす原因となり得ます。また、孤独感は、自己価値の低下や社会からの孤立感を増大させることがあります。これは、若者が社会に積極的に参加することを妨げ、彼らの将来に対する展望を暗くすることにも繋がります。
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オーストラリアでは2001年からこの問題に関するアンケートが実施されています。それによれば、現在15歳から24歳の42%以上が心理的問題を抱えています。10前と比べこの割合は18%増えました。
オーストラリアの若者たちが直面する孤独問題は、単なる個人的な問題ではなく、社会全体が取り組むべき課題です。政府、教育機関、民間団体、そしてコミュニティが協力し、若者たちが社会的なつながりを築けるような環境を整えることが求められています。孤独感を減少させ、若者たちの精神的な健康を守るためには、社会全体での意識改革と行動が不可欠です。
この課題に対する理解を深め、解決策を見出すためには、情報を共有し、議論を行うことが重要です。
参考
https://www1.racgp.org.au/newsgp/clinical/loneliness-epidemic-plaguing-young-australians
著者プロフィール
- 高尾康端
日本、スイス、シンガポール、アメリカで育ち、2004年からオーストラリアに移住。シドニー大学医学部を卒業。現在は東ブリスベンエリアHawthorne Clinicにて家庭医 (GP)として勤務。家庭医の観点からみる病気についての情報、また母国である日本と移住地オーストラリアの医療システムの違いや、オーストラリアで病気になった時に役立つ情報を発信している。
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