中国政府、ディーゼルトラック利用半減令 「鉄道アルマゲドン」起きるか
9月22日 深刻化する大気汚染の改善に向けて、中国政府がディーゼルトラックによる輸送を制限する方針を打ち出したことで、鉄鋼から化学製品などさまざまな中小工場が、停滞しがちな鉄道輸送へのアクセスを確保するための大争奪戦を繰り広げている。写真は2013年6月、安徽省淮北市で撮影(2017年 ロイター)
深刻化する大気汚染の改善に向けて、中国政府がディーゼルトラックによる輸送を制限する方針を打ち出したことで、鉄鋼から化学製品などさまざまな中小工場が、停滞しがちな鉄道輸送へのアクセスを確保するための大争奪戦を繰り広げている。
中国の環境保護省は8月、28都市を拠点とする数万の企業に対し、大気汚染が悪化する冬季期間中のディーゼルトラック利用について、11月1日までに半減させるよう命じた。
同省はまた、鄭州新力電力や邢台鋼鉄など20以上の電力や鉄鋼会社に対して、より厳格な恒久的目標を省令で示し、輸送の半分以上を鉄道に振り替えるよう指示した。
中国の重工業、特に鉄道網から遠く離れれていたり、地域間を短距離輸送させる内陸部の企業にとって、トラックはより安価で望ましい輸送手段だ。
一部の地域ではトラック輸送に対して過去にない厳しい締め付けを始めている。河北省と河南省中部では、一部の鉄鋼会社は常時、最大9割の製品を鉄道輸送しなくてはならない。現在、その割合は5─6割に過ぎない。
今回の動きは、各世帯が暖房を使用する11月から3月にかけて、中国北部を覆う大気汚染を緩和しようと、政府が長年取り組んでいる対策の新たな一手だ。家庭暖房向けの電力は、二酸化炭素排出や大気汚染を伴う石炭火力発電が主流となっている。
政府はこのほか、大気汚染を抑えようと、冬季は最大50%生産能力を絞るよう北部の製鋼工場や他の工場に要請している。
トラック輸送の制限に先立ち、主要港湾都市内におけるディーゼルトラックによる石炭輸送を禁止する政令が今年出された。
中国全土に張り巡らされた世界最大級となる約12万キロの鉄道網は、国内企業と海外市場を結び付けて、一大貿易圏を築こうとする中国政府の「一帯一路」構想の基軸となるものだ。
この輸送改革のスケールは計り知れない。高速道路を利用した輸送は、約430億トンを超える昨年の輸送物資の77%を占めていたが、鉄道輸送は8%しかなかった。
「これは、環境影響をいかに(政府が)真剣に考えているかを示す証左の1つだ。ただ、荒っぽいやり方だし、鉄道輸送が合理的でない路線もある」と、コンサルティング会社アルカディスでアジアの輸送ロジスティクスを担当するジョナサン・ベアード氏は言う。
中国鉄道省は、取材の要請に応じなかった。環境省と鉄道輸送価格を監視する担当部署は、コメントしなかった。