『ファンタスティック・ビースト』で帰って来たハリポタの魔法の世界
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<「ハリポタ」新シリーズ第1作の『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』は、難点もあるが未来の素敵な冒険を予感させる仕上がり>(写真:新たなヒーローは魔法動物学者のスキャマンダー〔写真右、エディ・レッドメイン〕)
映画シリーズを最初から成功させるのは簡単なことではない。昨年の『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』のように大成功を収めた作品もあるが、その希少性こそ難しさの証しだ。
酷評された新3部作から10年を経て、『フォースの覚醒』は私たちをなじみ深い銀河系に連れていくと同時に、個性あふれる新キャラクターで驚かせてくれた。彼らの姿に、観客は過去よりも未来について胸躍らせた。
『フォースの覚醒』の天文学的な成功で、『スター・ウォーズ』シリーズの興行成績は『ハリー・ポッター』シリーズのそれを抜いた(1位は『アベンジャーズ』などのマーベル・シリーズ)。しかしハリー・ポッターの新シリーズ『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』の公開で、順位はまた変わりそうだ。同シリーズは5部作となることが発表されている。
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愛すべき魔法の世界が帰って来たのは大歓迎。でも『ファンタスティック・ビースト』は『フォースの覚醒』にはなれない。冴えない登場人物やまどろっこしい展開に物語は立ち往生。J・K・ローリングが初めて挑戦した映画脚本に、誰も口を挟めなかったのだろう。監督は『ハリー・ポッター』の後半4作を手掛けたデービッド・イエーツだが、彼が魔法と格闘して負けたのはこれが初めてだ。
それでも作品世界は魅力的だし、未来に素晴らしい冒険が待っていることも予想できる。つまり『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』はほぼ満足できるが、シリーズ中では最も駄目な作品になるだろう。
問題の1つは魔法動物(ファンタスティック・ビースト)にある。やたらと登場するが、光りものが大好きなニフラー(下写真)以外、魅力的な動物がほとんどいない。時々主人公の魔法動物学者ニュート・スキャマンダー(エディ・レッドメイン)がボウトラックルやデミガイズたちの特徴を説明してくれるが、収集癖のある10歳の子供でなければ面白くない。
映画の舞台は1926年。冒頭、ニュートは蒸気船からニューヨークへ降り立つ。彼はすぐ、不安と不信が街に渦巻いていることを知る。謎めいた力(目撃者によれば「目のある黒い風」)による地割れや建物の倒壊が発生。ノーマジ(魔法使いでない普通の人間「マグル」を、アメリカではこう呼ぶ)の政治家たちは不和をあおり、新セーレム救世軍なる組織が人間界に潜む魔法使いの根絶を訴えている。
ニュートは大切な魔法動物が詰まったトランクを抱えているが、とあることから動物たちが脱走。米魔法議会の元捜査官ティナ・ゴールドスタイン(キャサリン・ウォーターストン)やノーマジのジェイコブ・コワルスキー(ダン・フォグラー)と一緒に捜し回る。一方、魔法議会の長官パーシバル・グレイブス(コリン・ファレル)は新セーレム救世軍の青年クリーデンス(エズラ・ミラー)と秘密のやりとりをしている。