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ニューズウィーク日本版編集部 From the Newsroom
スポーツに政治を持ちこまない...わけにはいかない
アフガニスタンが余裕でアメリカを撃破――。
テロ戦争ではなく、スポーツの話だ。今週、ワールドカップ予選が行われているドバイで、アフガニスタン代表チームがアメリカ代表チームに、「クリケット」で勝利した。
タリバン政権時代のアフガニスタンではスポーツは禁止。2000年なって人気スポーツのクリケットだけが唯一「許可」されて、翌年には代表チームが誕生した。今回、スポーツとはいえアメリカを下したことで、アフガン国民の多くが歓喜したのはいうまでもない。
スポーツと外交などがからむと、「スポーツに政治を持ち込まない」という話になるのだが、現実的には難しい。スポーツを通じて友好関係を深めるという概念があるなら、スポーツを通じて国家同士の仲たがいが起きることもある。
昨年末に行われたサッカーW杯予選のプレーオフ。W杯出場をかけた一連の試合をめぐって暴力事件やデモが頻発、エジプトとアルジェリアの外交関係は険悪になり、大使を一時召還する騒ぎにまで発展した。インドでは先月、クリケットの国際トーナメントの選手選択ドラフトで、パキスタン人選手が1人も選ばれなかった(ドラフト対象のパキスタン選手は世界でもトップクラスの選手たちだった)ことをめぐり、建国以来ずっと犬猿の仲である両国で抗議デモなどが発生、多くの逮捕者を出す事態に。
また最近ではスポーツがテロに巻き込まれるケースも少なくない。アンゴラでは今年はじめ、サッカーのアフリカ選手権に出場するトーゴ代表選手団を乗せたバスが独立組織の銃撃を受け、パキスタンでは昨年、クリケットの国際試合に訪れていたスリランカ代表チームのバスが、自動小銃などで武装したイスラム過激派10人に襲撃された。
逆に選手側がスポーツを利用することもある。国際試合を利用した亡命だ。イラク代表チームの3選手は07年、オリンピック予選でオーストラリアに遠征中にホテルから抜け出して行方不明になった。亡命を求めての逃走だった。08年にはアメリカでオリンピック予選を戦ったキューバのサッカーU23(23歳以下)代表チームの選手7人が、ホテルから忽然と姿を消した。キューバからの亡命者を受け入れるアメリカの「wet foot, dry foot 制度」のおかげで彼らはアメリカへの亡命を果たした。
こういう角度からスポーツを見るのは意外に面白い。
――編集部・山田敏弘
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