コラム

韓国の新規感染者数が初の4000人超え。日本とは何が違うのか?

2021年11月25日(木)16時23分
ソウル市街

行動制限緩和後、ソウル市街には人があふれた(10月30日) Heo Ran-REUTERS

<ワクチン接種率では同程度の韓国で感染が再拡大し、日本では低くとどまっているのは、一つには、寒暖の違いのせいかもしれない>

日本では新型コロナウイルス感染症の1日あたりの新規感染者数(以下、新規感染者数)が二桁まで減少していることとは対照的に、韓国では新規感染者数が爆発的に増加している。11月24日の新規感染者数は過去最大の4,115人を記録した。韓国で新規感染者数が4,000人を超えたのは初めてのことだ。

■韓国における1日当たりの新規感染者数と累積感染者数の推移
211125kimchart1.jpeg
出所)韓国疾病管理本部ホームページから筆者作成

韓国の11月23日現在の新型コロナワクチン接種率は1回目が82.4%、2回目が79.1%で、日本の78.6%と76.4%を上回っている。さらに、3回目の接種(ブースター接種)率も4.1%に達する。ワクチンの接種率は日本とほぼ変わらないのに、なぜ韓国では新規感染者数が増え続けているのだろうか。

まず、最初の原因として考えられるのが接種した新型コロナワクチンの種類だ。新型コロナワクチンの確保に出遅れた韓国政府は、今年の2月3日にファイザー製のワクチンを特例承認(正式に承認されるまでには医療従事者に限って接種が行われた。正式承認は3月5日)、その後2月10日にアストラゼネカ製のワクチン、4月7日にはヤンセンファーマ製(ヤンセン ファーマ は、ジョンソン・エンド・ジョンソンの医療用医薬品部門)のワクチン、そして5月21日にはモデルナ社製のワクチンを次々と承認した。

その結果、2月26日から始まった新型コロナワクチンの接種は高齢者を対象にアストラゼネカ製のワクチンが接種されることになった。その後、ファイザー製やモデルナ製の供給が増えたことにより、アストラゼネカ製やヤンセンファーマ製の接種は大きく減少したものの、11月23日時点の1次接種者のうちアストラゼネカ製やヤンセンファーマ製のワクチンを接種した人はそれぞれ11,116,361人(26.3%)と1,497,303人(3.5%)に達し、全体の約30%を占めている。

■新型コロナワクチンの種類別接種者数と構成比
211125kimchart2.jpeg
出所)韓国疾病管理本部ホームページから筆者作成

厚生労働省のホームページでは、ファイザー製やモデルナ製の新型コロナワクチンの発症予防効果はそれぞれ約95%と約94%と、アストラゼネカ製のワクチンの約70%より高い効果があると紹介している。また、アストラゼネカ製のワクチンは他のワクチンに比べて感染を防ぐ中和抗体の減少が速いことが指摘されている。

日本ではファイザー製やモデルナ製を中心に接種が行われたことに対し、韓国ではアストラゼネカ製とヤンセン製の接種者の割合が約3割を占めていることが最近の日韓における新規感染者の差に影響を与えたのではないかと推測される。

プロフィール

金 明中

1970年韓国仁川生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科前期・後期博士課程修了(博士、商学)。独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年からニッセイ基礎研究所。日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員、亜細亜大学特任准教授を兼任。専門分野は労働経済学、社会保障論、日・韓社会政策比較分析。近著に『韓国における社会政策のあり方』(旬報社)がある

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

昨年の北半球、過去2000年で最も暑い夏

ビジネス

MSCI、世界株指数の銘柄入れ替え

ワールド

北朝鮮の金総書記、戦術ミサイルシステム視察=KCN

ビジネス

米ウォルマート、数百人削減へ 本社などへの異動も要
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 2

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 3

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プーチンの危険なハルキウ攻勢

  • 4

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 7

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 8

    ロシア国営企業の「赤字が止まらない」...20%も買い…

  • 9

    ユーロビジョン決勝、イスラエル歌手の登場に生中継…

  • 10

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story