コラム

アマゾン・エコー vs LINEクローバの戦いはこうなる

2017年04月12日(水)20時20分

キラーはコミュニケーション

そのキラー用途とは、コミュニケーションになるのではないかと思う。

PC全盛時代は、ポータルや検索で幕を開け、最後はFacebookのようなソーシャルなツールが人気となった。スマホ時代は、簡単なアプリやゲームで幕を開けたが、最後はLINEのようなコミュニケーションツールが力を持った。

過去の傾向が続くのであれば、ボイス時代も、キラーアプリはコミュニケーション関連のものになるはずだ。

VoiceLabsのAdam Marchick氏も、「コミュニケーションやソーシャルな機能に関係するボイスアプリが、人気アプリになるだろう」と予測している。FacebookやSnapといったソーシャルのプレーヤーも、ボイスで何らかの動きを見せてくるはずだと言う。

関係者によると、AmazonはLINEに対して熱烈なラブコールを送ったという。Amazonもキラーアプリがコミュニケーションになると考え、LINEを有力パートナーとして取り込もうとしたのだそうだ。

LINE経営者も、キラーアプリがコミュニケーションになるという点においては同じ考えだった。だが、そのキラーアプリを開発するにはハードとソフトの両面が歩調を合わせる必要がある。そうでなければユーザーを魅了する新たな体験を作れないと考えた。なのであえてAmazonからのラブコールを蹴って、自らハードの開発に乗り出したのだという。

VoiceLabsは、ユーザー同士がコミュニケーションできる機能が年内にボイス・ファースト・デバイスに実装される、と予測している。

いよいよボイス・ファースト・デバイスがコミュニケーション機能を搭載するわけだ。

【参考記事】DataRobot使ってAI予測モデル4000個完成。リクルート社内で進む人工知能ツールの民主化

ボイスの時代のすみ分け

進化し続けるボイス・ファースト・デバイス。コミュニケーション機能の次は、AIの進化に伴う対話エンジンの精度の向上が見込まれている。Amazon Echoは、年内にはユーザーの雑談の相手もできるようになるだろう。

進化に伴い、影響を与える領域もさらに広がってくるだろう。現時点でその影響の範囲を見渡せる人はほとんどいないだろう。

ただ莫大な市場になることだけは、感覚的に理解できる。その莫大な市場がAmazonの手中に落ちるのを、世界のテック大手が指をくわえて見ているだけ。そんなわけはない。

Googleは、決してGoogle Homeを諦めないだろうし、そのほかのテック大手もボイス・ファースト・デバイス市場に参入してくるはずだ。

VoiceLabsは、年内にApple、サムスン、Microsoftの3社のうち少なくとも2社は、ボイスファーストの「魅力的な」製品を出すのではないかと予測している。

ただ同じような製品を出してもAmazonには追いつけない。なので各社、自分の強みを出して差別化を図ってくるはずだ。

Googleの強みは、メールやカレンダーのユーザーを数多く抱えていること。メールやカレンダーのデータをベースにしたパーソナライゼーションで、差別化してくるはずだ。

Microsoftは同様に、企業内のメール、カレンダーなどのユーザーを抱えている。ビジネス向けのボイス機能で勝負をかけてくることだろう。

Appleは、AppleTVや新型イヤホンのAirPodsを使って、娯楽の領域での覇権を狙ってくるかもしれない。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米輸入物価、9月は前月から横ばい 消費財価格がエネ

ワールド

「トランプ口座」は株主経済の始まり、民間拠出拡大に

ビジネス

米11月ISM非製造業指数、52.6とほぼ横ばい 

ワールド

EU、ウクライナ支援で2案提示 ロ凍結資産活用もし
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 2
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与し、名誉ある「キーパー」に任命された日本人
  • 3
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させられる「イスラエルの良心」と「世界で最も倫理的な軍隊」への憂い
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 6
    台湾に最も近い在日米軍嘉手納基地で滑走路の迅速復…
  • 7
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    トランプ王国テネシーに異変!? 下院補選で共和党が…
  • 10
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 7
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 8
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story