コラム

銀行はイノベーションのハブになれるか

2016年12月06日(火)16時00分

Gajus-iStock.

<日本がシリコンバレーになるのははっきり言って無理。優秀な人材がベンチャーではなく大企業に集まる傾向にある日本では、大企業とベンチャー企業のマッチングからイノベーションが生まれる可能性が高い。両社を結びつけるのが企業情報を豊富に持つ銀行だ>

 メガバンクが、大企業とベンチャー企業のマッチングにより積極的に動き始めた。企業に関する情報量では圧倒的な強さを持つだけに、日本らしいイノベーションのハブになるかもしれない。キーパーソンの一人、みずほ銀行イノベーション企業支援部の大櫃(おおひつ)直人氏は、マッチング業務が銀行の主要業務の1つに育つ可能性があるという。

「シリコンバレーを日本に」は無理

 僕がシリコンバレーに住んでいたころから今にいたるまで、「日本にシリコンバレーのようなテクノロジーの集積地を作るのにはどうすればいいか」という質問を受けることがよくある。

【参考記事】シリコンバレーが起業家を殺す

 僕の答えは、一言、「無理」。日本と米国では、ビジネス風土が大きく異なるからだ。

 優秀な人が次々と起業する米国とは異なり、日本の優秀な人材は大企業に集まる傾向にある。そして大企業の中に埋もれ、能力を低下させる傾向にある。

【参考記事】シリコンバレーのスタートアップが大企業志向に!

 ベンチャーで成功する人が増えれば、起業志望者が増えるはず。30年前からそう言われてきた。少しは増えているのかも知れないが、優秀な学生の多くが大企業を目指している状況はいまだに変わらない。

【参考記事】「民泊」拡大が暗示するのは、銀行のない未来

 なので日本には、シリコンバレーとは異なる形でイノベーションを起こすべきだと思っている。日本で大きなイノベーションを起こすには、大企業を巻き込むしかない。ずっとそう思ってきた。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

EUはトランプ関税に屈服せず 対抗措置も検討=貿易

ビジネス

富士フ、印タタ・グループ傘下企業と提携 半導体材料

ビジネス

ノジマ、26年3月期は増収増益予想 買収のVAIO

ワールド

インドがパキスタンの「テロ拠点」攻撃、8人死亡 イ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 2
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 3
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1位はアメリカ、2位は意外にも
  • 4
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 10
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story