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森喜朗女性蔑視発言は、なぜ沈静化しないのか──ジェンダー対立に留まらない5つの論点
また今回、女性差別問題に隠れてしまっているが、重要な問題点は、スポーツ庁の女性理事の割合を40%以上とする目標を掲げているガバナンスコードを軽視する冒頭の発言だ。
「発言の趣旨は、ガバナンスコードの数値にこだわる必要がないという部分だと受け止めました。それを仮に『守らなくてもいい』と本気で考えているのなら問題です」と危機感をあらわにする。
「多様性と包摂(Diversity and Inclusion)」の理念を謳う組織のトップが、理念・ルールについて「うるさい」と発言していることは、コンプライアンス上、大きな問題だ。
義理人情浪花節の実行力を重視するか、組織の理念を毀損する存在として容認しないか、で意見は分かれる。
当事者 vs 評論者
以上の4つの対立軸に加えて、オリンピックという世界的なイベントを、コロナ禍が継続する中、半年後に控えるという特殊な状況で当事者であるか、評論家であるか、という立場の違いは大きい。
たまたま私は、先程紹介した東京都顧問の仕事の一環で、IOCや国内外の競技団体、国や都、場合によっては近隣の都道府県、スポンサーなどとの開催準備作業の一端を観た。招致成功以来、5000人規模の寄り合い所帯が施設設営、ロジスティクス調整等、膨大な調整業務の作業を行っている。
コロナが収まっていないのに、オリンピックどころではない、2週間のスポーツイベント開催よりも国民の医療体制を守ること、安心・安全が優先だという国民感情は私にもある。
但し、当事者として準備にあたっている方々とオリンピックの主人公であるアスリートへの敬意(Respect)は必要だと思う。国のために闘っているのに、なぜ闘っていると非難されているような「ベトナム戦争のアメリカ兵の気持ち」と聞いたこともある。オリンピックは問題も課題も多いが多くの人が一度は待ち望んだ東京2020オリンピックではなかったか。
開催準備に既に相当なコストを投下し、開催に向け努力している人たちと参加に向けてトレーニングに励む世界中のアスリートがいる以上、最後まで開催に向けた努力を諦めるべきではないと思う。
そういう意味では森会長は、本当に命がけで「7年やってきた」のだと思うし、そのオリンピック開催に向けた当事者意識は尊敬に値すると思う。
ここが分水嶺と国民が直観
東京2020大会の基本コンセプト「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」を組織トップそのものが重視していないことを露呈し、スポーツ庁の女性理事の割合を40%以上とする目標を掲げているガバナンスコードも軽視するよう会議体に圧力をかけたという深刻なものだ。
IOCも世論や選手、協賛社から非難の声が相次いだことを受けて、改めて「不適切だ」と立場を明確にしている。
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