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森喜朗女性蔑視発言は、なぜ沈静化しないのか──ジェンダー対立に留まらない5つの論点
発言内容の全文を読むと決して失言ではない。明確な意図と、むしろ責任感を持って発言されている。
「文部科学省の割当などというルールが最近があるが、自分は女性理事が増えることに反対だ」というメッセージを評議会メンバーに伝えている。「テレビがあるからやりにくい」「あまりいうと新聞に悪口かかれる」自身の発言が社会的には許容されないということを明確に理解して発言した確信犯だ。森会長は、巧妙なのか、冷たい空気を読んだのか、最後に
"ですからお話もきちんとした的を得た、そういうのが集約されて非常にわれわれ役立っていますが、欠員があるとすぐ女性を選ぼうということになるわけです。"
とフォローもしている。森会長を擁護する人は、マスコミによって最後のメッセージが切り取られているとこの部分だけを切り取り反論する。ただ、文脈全体をしっかり読むと、「女性はわきまえていれば」そういう女性には処遇を提供しますよという黒い意図を匂わせている。
長老 vs 若手
私自身は男性で若手と言える年齢ではないが、先程の女性たちの気持ちが経験上推察できる。日本においては、目上の人に対して、男性の若手が発言する時にも同様の空気感と無言の圧力が流れるからだ。
自分は長々と取り留めもない話を、その場で考えながらダラダラと話し、若手や女性が自分の予定調和でない文脈で話を始めると、突然不機嫌になる。先のJOC評議会での森会長の挨拶は実に40分だ。挨拶は通常長くて10分程度ではないか。しかし、そういうおじさんは日本中にたくさんいる。高齢化しても役職者はやめず、妖怪のような存在になっていく。若手は機会を与えられず、人によっては徐々に若手自身も保守化し、益々萎縮し、思考停止する。
政界では、60歳は鼻垂れ小僧、70歳になって一人前などと聞く。
ただ、個人的には「老害」という言葉は好きではない。年齢でひとくくりにする議論も乱暴だし思考停止だ。素晴らしく発想が柔軟で新しいことに挑戦しているご高齢の方もいるし30代でも発想が老け込んでいる若手もいる。
「女性はこうだなんて決めつけは老害です!」という言葉は言語矛盾がある。
內部(Inner) vs 外部(Outsider)
森会長は、組織委員会のなかでは人望が厚いと聞く。
「見ると、発言しなかった人はみんな泣いているんだ。一番こたえたのは武藤さんの言葉だったかな。『ここで会長が辞めれば、5000人の組織はどうなりますか』と詰められました」
発言に対する組織委員会内での批判は、匿名で何人か記者が拾っていたが、大会憲章に明らかに違反しているトップの辞任を內部から要求するという動きはまだない。
組織委員会は、舛添都知事も当時3兆円に及ぶ可能性に言及した予算規模を動かす重要な機構だ。かつて東京都のオリンピック調査チームとして、調査に入った経験があるが、東京都からも国からも独立しその組織ガバナンスは外から見えにくかった。施設の移設問題は、これ以上かき回さないでという現場の感覚はあったと思うが、舛添都知事時代に徹底して検討済として外部からの検討依頼には必ずしも協力的ではなかった印象がある。
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