コラム

日本学術会議問題を「総合的俯瞰的に」考察して浮かび上がった、菅総理の驕り

2020年12月03日(木)21時26分

カウンターデモクラシーは選挙以外の手段で社会の声を政治に伝える仕組みだ。具体的には街頭のデモ、政治的発信をする市民組織、批判的なメディア等がそうだ。

例えば2020年5月の検察庁検察官定年延長問題において、3日間で500万リツイートを集めた「#検察庁法改正案に抗議します」に参加するのもカウンターデモクラシーの一つだ。現に、その「ある種の民意」の力が、「国民の声を十分に聞くことが大事だ」(安倍首相当時)と検察庁法改正案の今国会成立を見送りに繋がった。

(当時安倍総理は「黒川さんと2人で会ったことはないし、個人的な話をしたことも全くない」と関係性を否定しており首相周辺は批判の強い改正法案は不要との考えだったと言われるが、首相よりも菅氏が強く検察への人事介入にこだわったと見られている。)

但し、選挙に出なくとも健全な民主主義への参画は可能であり、国民の多くが選挙には白けているが、ネット上での政治的主張には熱心だったりする。

橋下氏が以前、批判を繰り返すコメンテーターや学者に、「そんな事言うなら、あなたが選挙にでなさいよ。被選挙権はあるのだから」と逆ギレしていたことがよくあった。被選挙権の行使は、民主主義の王道だ (事実2016年にはトランプ大統領の誕生に危機感を覚えた女性マイノリティ候補者が多く選挙に出馬し当選した) 。

橋下氏も菅氏も、最近の政治家は、その普通選挙の結果のみを民意として、正当性を主張しすぎる傾向があるような気がする。選挙の洗礼を受けた政治家が、強い人事権を持って官僚を動かし、マスコミの報道姿勢にも介入する。世襲の政治家よりも、苦しい選挙戦を勝ち抜いてきた叩き上げの政治家ほど、マスコミ、学者、デモ等のカウンターデモクラシーに対する嫌悪感は強いのかもしれない。事実、成り上がりトランプ大統領も、BLM(Black Lives Matter)などのデモを暴動と嫌悪し、国軍を持ってしてでも制圧しようと計画するほどカウンターデモクラシーに対する嫌悪は強かった。

これはこれからのインフォデミック社会の政治家の一つの態度の大きな特徴かもしれない。

菅首相に色濃くにじむ「選挙結果だけを国民の意思と見なす思想」~学者を退ける政治の病理

まとめ

日本学術会議問題は、小さな行政組織の少人数の問題だ。ただ、構造を俯瞰的にみるだけで多くの論点がみられる。改めてここに整理すると、

論点1)この問題には「政治家」と「学者」との本質的な立場の違いの対立構造がある

論点2)更に加えて、戦後日本の「普通の国」と「特別の国」の対立構造がある

プロフィール

安川新一郎

投資家、Great Journey LLC代表、Well-Being for PlanetEarth財団理事。日米マッキンゼー、ソフトバンク社長室長/執行役員、東京都顧問、大阪府市特別参与、内閣官房CIO補佐官 @yasukaw
noteで<安川新一郎 (コンテクスター「構造と文脈で世界はシンプルに理解できる」)>を連載中

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ミネソタ州に兵士1500人派遣も、国防総省が準備命

ワールド

EUとメルコスルがFTAに署名、25年間にわたる交

ワールド

トランプ氏、各国に10億ドル拠出要求 新国際機関構

ワールド

米政権、ベネズエラ内相と接触 マドゥロ氏拘束前から
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
2026年1月20日号(1/14発売)

深夜の精密攻撃でマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ米大統領の本当の狙いは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰に地政学リスク、その圧倒的な強みとは?
  • 2
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で国境問題が再燃
  • 3
    DNAが「全て」ではなかった...親の「後天的な特徴」も子に受け継がれ、体質や発症リスクに影響 群馬大グループが発表
  • 4
    シャーロット英王女、「カリスマ的な貫禄」を見せつ…
  • 5
    AIがついに人類に「牙をむいた」...中国系組織の「サ…
  • 6
    「リラックス」は体を壊す...ケガを防ぐ「しなやかな…
  • 7
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 8
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 9
    中国ネトウヨが「盗賊」と呼んだ大英博物館に感謝し…
  • 10
    【総選挙予測:自民は圧勝せず】立憲・公明連合は投…
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 3
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試掘の重要性 日本発の希少資源採取技術は他にも
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 6
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 7
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 8
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 9
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 10
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story