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航空業界アメリカで満席のフライト増加! 現状と不安を客室乗務員が本音で語る
Little Fear of Flying
大幅に出発が遅れても乗客は不満を口にせず、「ありがとう」の一言も増えた ROBERT ALEXANDER/GETTY IMAGES
<アメリカの航空機マナーはコロナウイルスで変わった?>
新型コロナウイルスの勢いは衰えず、専門家は移動に伴う感染リスクに警鐘を鳴らす。それでも活気を取り戻しつつあるのが、アメリカの航空業界。満席のフライトも増え、乗客は主に旅行客だという。
業界で働く人の思いは複雑だ。フライトが増えれば失業の恐れは減るが、客室乗務員や空港職員の感染リスクは高まる。米航空大手3社(アメリカン、デルタ、ユナイテッド)のうち1社に勤務する34歳の男性客室乗務員に、本誌モリー・オルムステッドが取材。匿名を条件に、空の旅の今を語ってもらった。
――パンデミック(世界的大流行)で仕事はどう変わった。
すごく退屈になった。4時間半未満のフライトでは機内食の提供がなくなり、注文に応じてカクテルやソフトドリンクを用意するだけ。座っている時間が長くて、エドガー・ライス・バローズの『火星シリーズ』をもう5巻まで読んだ。仕事に行くだけで給料がもらえると喜ぶ人も多いが、僕は乗客と交流したい。
航空業界は年功序列社会で、僕はその底辺近くにいた。コロナの影響で休職したり仕事を辞めたりする人が増え、一気に出世できたのは確かだ。
――機内の様子は。
ビジネス客が激減し、ファーストクラスはがらがら。エコノミーは家族連れが多く、夏休みの旅行客も増えてきた。フロリダ州オーランドに飛んだときは子供だらけだった。
乗客の態度は驚くほどよくなった。ありがとうと言われることが増えたし、みな指示に従ってくれる。機体の不具合で出発が遅れても、文句一つ出なかった。5時間遅延したときでさえ、失礼なことを言う人はゼロだった。
――空港はどう?
全米で一番混雑しているのがダラス・フォートワース国際空港。僕が勤務したダラス発着便は全て満席だった。今は定員を85%まで減らしているはずだが、ダラス発の便はどれも85%の搭乗率だ。
客も知恵を付けている。一部の州が、ニューヨークとニューオーリンズから来た人々に自宅待機を指示したときは、大勢がフェニックスやダラスを経由した。ニューヨークやニューオーリンズから来たのがばれないように、わざわざ別々のチケットを買ってね。
――パンデミックの初期と比べて変わったことは。
4月は乗客が(前年と比べて)約90%減ったが、7月は55%まで予約で埋まっている。ダラス空港なんて一見、パンデミック前と変わらない。
――不安なことはある?
大手3社は政府の助成金や融資を受けたから、僕は10月に失業するかもしれない(注:米政府は9月30日まで従業員を解雇しないことなどを条件に、航空業界に250億ドルの支援を拠出した)。
勤続年数が8年に満たない従業員は不安を感じている。でもうちの会社の従業員はほとんどが大卒だから、何かしら仕事は見つかるはず。
僕はほぼ確実に解雇されるが、悩まないことにしている。前の仕事をクビになったときは、しばらく建設現場で働いた。今回もそうしたっていい。元は消防士だったから、そっちに戻ることもできる。でなきゃ失業保険で食いつないで、この業界で再就職先を探す。
――もっと大勢に飛行機に乗ってほしい?
感染対策を取ってくれるなら。この前乗ったおじいさんは、頼んでもマスクを着けてくれなかった。こういう人は困る。乗客が増えるのはありがたいが、ちゃんと手を洗い、マスクを着用してほしい。
© 2020, The Slate Group
2020年7月28日号(7月21日発売)は「コロナで変わる日本的経営」特集。永遠のテーマ「生産性の低さ」の原因は何か? 危機下で露呈した日本企業の成長を妨げる7大問題とは? 克服すべき課題と、その先にある復活への道筋を探る。
[2020年7月14日号掲載]