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渡瀬 裕哉 リバタリアン・マインド
アジアの自由主義系シンクタンクの年次総会、Asia Liberty Forum2022開催
マニラで開かれたAsia Liberty Forumの様子
<アジア地域で活躍する自由主義系シンクタンクの関係者が集う年1度のイベントが開催された......>
9月29日・30日にフィリピン・マニラでAsia Liberty Forumが開催された。同イベントはアジア地域で活躍する自由主義系シンクタンクの関係者が集う年1度のイベントである。参加国が持ち回りで開催しており、筆者も過去にインド、ネパール、マレーシア等で開催された同イベントに参加している。
Asia Liberty Forumは米国のアトラス財団がコーディネートしている。同財団は著名なシンクタンクであるロンドンのIEAを設立したアントニー・フィッシャー氏が1981年に設立し、その後世界中の自由主義系シンクタンクの育成・組織化に尽力している。現在では、アトラス財団は知る人ぞ知る世界の自由主義ネットワークの一つであり、100か国以上参加し、数百に及ぶシンクタンクが組織化されている。欧州ではハイエク研究所などの名門シンクタンクが名を連ねており、欧米の政治関係者ではその存在を耳にしたことがある人も多いだろう。
経済政策に影響を与える独立系のシンクタンクばかり
今回のAsia Liberty Forumでは、インドからはCenter for Civil Society、香港からはLion Rock Institute創設者、マレーシアからはIDEASなどの活動的なシンクタンクが参加し、2022年大会の主催はフィリピンのFoundation of Economic Freedomが務めた。参加国は数十か国。いずれも活躍する地域においては現政権の経済政策に影響を与える経済系のシンクタンクだ。しかも、日本の通例である政府の御用型シンクタンクではなく、一定の距離を保った独立系の組織ばかりという点に特徴がある。
本年のフォーラムのテーマは、移民市場、食糧輸出入規制、アジアにおける女性の経済的権利、財産権と投資の関係、フェイクニュースが言論の自由にもたらす脅威、インド太平洋地域の自由貿易のフレームワーク、権威主義国からの亡命などが議論された。
以前にマレーシア大会に参加した際、TPP参加国のシンクタンクからは、TPPの枠組みが自由貿易のためのツールという側面だけでなく、自国の腐敗した社会システムを改革するためのツールとして捉えられていたことなど、多様な角度から意見交換がなされたことが記憶に残っている。今回のフィリピン大会ではIPEFなどの役割について、米国や中国との関係について熱い議論が交わされた。
権威主義国による脅威認識が通底として共有されており、直近の時勢を反映した内容になっていたものと思う。日本の国名が挙げられた話題としては、インド太平洋地域の自由貿易のフレームワーク構築について言及が多かった。この分野については複数の自由貿易協定を主導した日本の評価は高く、その重要性を改めて認識させられる。
日本人参加者が毎回1名しかいない
同フォーラム中に実施された今年の社会的なシンクタンクの活動を称えるアワードは、インドで女性の経済的人権を訴えるシンクタンクが受賞することになった。具体的には女性がバーでお酒を提供していたら逮捕されたことに対する法改正を訴えるシングルイシューの取り組み、非常に分かりやすくローカルな取り組みも評価される。各々の国柄が反映した話題で興味深い。
さて、このフォーラムの時期になると日本人参加者が毎回1名しかいないことに寂しさを感じる。その原因は以前の記事にも書いたが、日本からも世界の自由主義ネットワークに自主的に参加する人がもう少し増えて、日本での政治・政策に関する議論がもう少しグローバルな形に開けていくことが望ましいものと思う。
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