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「ポスト真実」の21世紀でヒトはどう進化するのか?
石器時代には人々は自分で自分の着るものを作り、火をおこし、うさぎを狩らなければならなかった。だが、現代人は自分がふだん着ている服のジッパーの構造すら知らない。「個々の人間は恥ずかしくなるほど世界について無知であり、歴史が進むにつれ、ますます知っていることが少なくなっている」とハラリが書くとおりなのだが、私たちは自分たちがもっと知っているような「知識錯覚」に陥っている。それは、他人の頭の中にある知識をまるで自分のもののように扱うからだ。これが「集団思考」だ。
進化論の観点からは、ホモ・サピエンスにとって他者を信頼する「集団思考」は非常に有効だった。だが、世界がもっと複雑になった現代では「集団思考」と「知識錯覚」が問題を引き起こしている。
たとえば、イラクやウクライナへの対処にしても、地図のどこにあるか指差すことができない人たちが非常に強い意見を持っている。自分が無知だと感じたい人はいないので、同じような考え方をする友人たちとだけ交流し、自分が信じる情報が正しいことだけを互いに確認しあい、信念を強化する。
民主主義は「有権者はよく知って投票する」という考えに基づいているが、私たちもよく知っているように、有権者は政治家のアジェンダを冷静に分析したりはせず「感情」で投票する。そういったこともハラリは指摘する。しかも、多くの者には自分が感情で投票している自覚すらないのだ。そういった人たちが平等に重要な票を投じるのだから、考えると恐ろしいことである。
真実ではないフィクションの「偽ニュース」は、現代の大きな問題になっているが、フィクションのすべてが悪いというわけでもない。『サピエンス全史』を読んだ人なら覚えているだろうが、フィクションの形でコンセプトを伝えることが、人類のユニークなところなのだ。人間にフィクションを作って信じる能力がなければ、「国家」という観念を信じさせ、維持させることもできない。問題をこうして他の角度から見させてくれるのも、ハラリの魅力だ。
ハラリの『21 Lessons for the 21st Century』を読んでも、人類の未来に対する明確な答えは得られない。だが、「良い質問」はぎっしりと詰まっている。
そう思ったので、クリスマスに17歳のアメリカ人の甥にこの本をプレゼントした。アメリカのトップ0.1%以上の収入がある親から勝ち組になるためだけの教育を受けてきた彼に、彼らが生きねばならぬ21世紀を異なる角度から考えてもらいたかったからだ。
21世紀に人類がどんな進化をとげるのか、それを個人的に見届けることができないのはつくづく残念だ。
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