コラム

長野五輪の栄光のモニュメントを目指して オリンピック・イヤーに想う日本の未来 

2021年06月15日(火)13時00分

◆「スーパーカブ」に宿る昭和へのノスタルジー

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白馬の橋の上で出会った"ミスター・カブ"

平川にかかる国道148号の橋の上で、"ミスター・カブ"に出会った。今、アニメの影響で、ホンダ「スーパーカブ」が改めて注目されているらしい。1958年に販売が始まったスーパーカブは、低燃費と高耐久性に優れた実用重視の50ccバイクで、日本では出前や郵便配達でおなじみである。世界でも東南アジアを中心に庶民の足として爆発的に売れていて、人類史上最も多く生産された輸送機器だとされる。

スーパーカブは、基本設計やスタイルを変えずに製造販売されている超ロングセラー商品でもあり、ここまで来れば昭和の「モノづくり日本」を象徴する日本人の誇りである。アニメ『スーパーカブ』(高校生の少女がスーパーカブと出会い、「何もなかった」人生を充実させていくストーリー)が、中年層を中心にヒットしているのも、ピークを過ぎた「メイドインジャパン」へのノスタルジーと密接にリンクしているのだと僕は思う。ちなみに、アニメ『スーパーカブ』の舞台は、この旅で通過した山梨県北杜市である。歩いて見てきた町の風景が、美しいアニメの絵で再現されているのはなんだか不思議であり、ほのかに嬉しいことだ。

平川を渡り、別荘やスキー宿が並ぶ瀟洒なエリアを過ぎると、しばらく前から遠くに見え隠れしていたジャンプ台がはっきりと見えてきた。僕が生でオリンピック競技を見たのは、1976年モントリオール・オリンピックのバレーボールと、1998年長野オリンピックのアイスホッケー、そして、ここで行われたスキージャンプである。


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ついに眼前に威容を表した白馬ジャンプ競技場

◆逆境を乗り越えた奇跡の物語

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長野五輪を知らない世代も見学に訪れていた

白馬ジャンプ競技場は、長野五輪に先立つ1992年に開場したサマージャンプもできるオールシーズンのジャンプ台で、現在も大会や選手の練習場に現役で使われている。一般の見学もでき、リフトに乗って五輪の資料館があるメインタワーと、選手のスタート地点直上の展望台に上ることができる。僕が到着したのは、リフトの運行終了直前で、ちょうど高校生のグループが見学を終えて下りてくるところだった。長野五輪をリアルタイムの出来事として知らない世代である。

そんな若い人たちに向けて、伝説のあらましを書いておこう。前回大会の1994年リレハンメル五輪で、日本代表チームはエース原田雅彦の大失速ジャンプで手に届きかけていた金メダルを逃していた。4年越しの悲願を地元で達成すべく挑んだ長野大会。1本目の2番手斎藤が130mの大ジャンプで1位につけ、いよいよ原田の番が回ってきた。すると、にわかに前が見えないほどの吹雪になった。その中で飛んだ原田の1本目は、リレハンメルの悲劇を再現したかのような大失速。1本目が終わった時点で、順位はメダル圏外の4位に落ちていた。悪天候よる競技中断を挟み、降り続く雪の中2本目がスタート。日本チームは次々と安定したジャンプを見せ、3度目の失敗は絶対にできない原田も、プレッシャーをはねのけて137mの特大のジャンプを飛んだ。アンカーの船木が飛び終え、金メダルが決まった時の原田の「ふなきぃ〜、ふなきぃ〜」という嗚咽で言葉にならない震え声は、多くの日本人の心に刻まれている。

この伝説は、オリンピック・イヤーの今年、原田らを支えたテストジャンパー・西方仁也の視点で映画化された(『ヒノマルソウル〜舞台裏の英雄たち〜』6月18日公開予定)。東京五輪でも映画化必至の伝説が生まれれば良いが、収まらないコロナ禍の中、開催自体に反対する声が多いのが現実だ。確かに、退くのもまた勇気である。それでも、前へ前へと跳躍して逆境を乗り越えたドラマをこの目で見た僕には、簡単には後ろ向きの考えを持つことはできない。

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ラージヒルのスタート地点。奇跡の金メダルはここで生まれた

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長野五輪の金メダル

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今回歩いたコース:YAMAP活動日記

今回の行程:青木湖 → 白馬ジャンプ競技場(https://yamap.com/activities/11395602)※リンク先に沿道で撮影した全写真・詳細地図あり
・歩行距離=16km
・歩行時間=6時間29分
・上り/下り=329m/384m

プロフィール

内村コースケ

1970年ビルマ(現ミャンマー)生まれ。外交官だった父の転勤で少年時代をカナダとイギリスで過ごした。早稲田大学第一文学部卒業後、中日新聞の地方支局と社会部で記者を経験。かねてから希望していたカメラマン職に転じ、同東京本社(東京新聞)写真部でアフガン紛争などの撮影に従事した。2005年よりフリーとなり、「書けて撮れる」フォトジャーナリストとして、海外ニュース、帰国子女教育、地方移住、ペット・動物愛護問題などをテーマに執筆・撮影活動をしている。日本写真家協会(JPS)会員

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