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サイバー攻撃が、現実空間に大被害をもたらしたと疑われる二つの事例
2008年8月6日、トルコ東部のレファヒエでパイプラインが爆発した。トルコ政府は、公式にはシステム故障のせいにしたが、クルド人の分離主義者たちのクルディスタン労働者党(PKK)が犯行声明を出した。
しかし、米国のインテリジェンス機関は、ロシアのサイバー攻撃による爆発と見ている。攻撃者が警報器を停止し、通信を切断し、パイプラインの中の原油の圧力を高めて爆発させたというが、直接的な証拠は示されていない。状況証拠、動機、そして洗練された技術レベルに基づいた判断だという。というのも、このパイプラインはロシアを避けて作られており、資源政治で復権しようとしていたロシアの利害を侵害するものと受け止められていたからである。
写真:2008年8月6日、トルコ東部でバクー・トビリシ・ジェイハンパイプラインが爆発した REUTERS/Anatolian-Muhammet Ispirli (TURKEY)
約107センチメートルの直径のパイプラインは地面に埋められているが、ところどころで地上に露出し塀で囲まれたバルブ局によって区切られている。パイプを区切ることによって漏れの際に対応しやすくするためである。約1769kmにもなる長大なパイプラインには、圧力や油の流れなどを測るさまざまなセンサーと監視カメラが付けられていたが、監視カメラの動画は攻撃者によって削除されていた。しかし、別のネットワークに取り付けられていた赤外線カメラが、爆発の数日前、ラップトップパソコンを持ちながらパイプライン沿いを歩く二人の男を写していた。
パイプラインの制御室が爆発を知ったのは爆発の40分後で、火炎を見つけたセキュリティ担当者からの通報によるという。その後の調べでは、サイバー攻撃の侵入口は、監視カメラそのものであった可能性がある。カメラのソフトウェアに脆弱性があり、そこからネットワークに侵入してコントロールを奪ったと見られている。バックアップの人工衛星による監視も止められていた。
犯行声明を出したPKKにはパイプライン破壊の動機はあるが、これほどの技術力はない。PKKは攻撃者との間で事前に打ち合わせし、PKKが犯行声明を出すように調整が行われていたと考えられている。
これらの二つの事件は技術的な説明・証拠がほとんどなく、確実な事例だとは見なされていない。正確な話というよりは政治的な動機付けを持った話だと見たほうが良いのかもしれない。
■サイバー攻撃は、現実空間に影響し、被害をもたらす
しかし、重要なポイントは、これらが過去に本当にあった話なのかどうかよりも、今後実際にそうしたサイバー攻撃が可能なのかどうかという点である。
もし米国がソ連に対して偽の製品を送り込み、重要インフラストラクチャを破壊することができたとしたら、米国の敵国が米国に対して同じことをできるかもしれない。実際、近年の米国はハードウェアの部品の供給を他国に大きく依存している。米国は中国からのサイバー攻撃を批判しながら、中国から大量の製品や部品を購入している。中国から細工された製品、偽物の製品が米国に送られてきていれば、かつてのソ連と同じように米国の産業基盤を長期的には切り崩す可能性がある。米国だけでなく、日本を含めたあらゆる国に影響があるだろう。
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