日本の欧米信仰の罪深さ...中東で戦争が起きている今こそ、日本にしかできないこととは?
東京・新宿駅前でのイスラエルへの抗議デモ(10月10日)YUSUKE HARADA―NURPHOTO/GETTY IMAGES
<イスラエルとハマスの戦争においても当たり前のように欧米追従の日本外交。だがイラン出身の筆者は、中東諸国からの尊敬される日本はもっとできることがあるはずだと説く>
イスラエルとハマスの戦いが止まらない。日本にいるとニュースでの扱いも欧米ほどセンセーショナルではなく、遠い地で「またやってるな」というくらいの感想をお持ちの読者もいると思う。
そんななか、芸人のパックンさんが本誌ウェブ版のコラムでイスラエルとパレスチナの問題を扱っていて、アメリカ人からこの問題がどう見えるか、どう語られるかがよく分かって面白かった。だから私は、この問題がイラン人からはどう見えるのかを書いてみたい。
イランは多くの日本人が思い描いている、イスラム国家としての画一的なイメージよりも、実際は複雑な国だ。政治体制はイスラム国家だが、国民の宗教観や社会観はイスラム国家のイメージに縛られない。首都テヘランにはユダヤ系の人もいて、シナゴーグ(ユダヤ教会堂)もある。
イランで人気の米ロックバンドは?
ヒジャブの強制着用に対する抗議デモはあるものの、アラブ諸国と異なり服装はずっと自由で、欧米からの旅行者にも非常にフレンドリー。少し会話を交わしただけで「ウチで夕食を取らないか?」という話になる。私が中学生の時に人気だったのはロックバンドのガンズ・アンド・ローゼズだったし、もしかしたら日本以上に欧米のカルチャーを取り込んでいるかもしれない。
だが、アメリカやイギリスという国家に関する話題になると、話に「もや」がかかる。嫌いとか憎いとかいう感情はないのだが、かといって大好きか、信頼できるかと聞けば、イラン人は曖昧に笑って、困った顔をするだろう。
イラン革命の時にアメリカとイギリスとはいろいろあったし(と私の親世代は言う)、イスラエルが建国されてから中東は戦争が絶えないし(4回にわたる中東戦争)、いろいろ理由をつけてアメリカは何度も中東に侵攻や関与をするし(イラン・イラク戦争や湾岸戦争、イラク侵攻)、仲良くしたくないわけじゃないけど、それじゃ困るなぁ、というのが国民感情である。
しかし、それでも一般人は「困るなぁ」程度の国民感情ではある。イスラエルのパレスチナ侵攻も一般人に大きな犠牲が出ていて非常に胸が痛むのであるが、だからといって過激な抗議活動が広まるわけでもなく、静かに行く末を見守っている。なぜなら、ここまで事態が進んでしまうと、止められるのは国家間のパワーゲームでしかないことを、イラン人はよく知っているからだ。