菅首相の会見、アドリブも鋭い質問も大歓迎な米仏の大統領とこんなに違う
BEHROUZ MEHRIーPOOLーREUTERS
<なぜか緊張感が強すぎ、事前準備のない質問には直接答えない菅首相は、本物の記者会見をしたことがない>
6月17日の夕方7時、数週間ぶりに首相官邸で菅義偉首相の記者会見に出席した。外国記者はあまり参加できないので、できると「ラッキー」と思ってしまう。なぜなら抽選で決まるから。そもそも記者の人数が制限されている上に、新型コロナウイルス感染症対策という理由でさらに人数削減になり、全部で29人しか参加できない。
そのうちなんと19人は記者クラブ(内閣記者会)所属の記者で、残りの10人は雑誌、フリー記者と外国マスコミの中から抽選で選ばれる。外国記者の場合は外務省が発行する「外国記者登録証」を持っていることが条件だが、該当者は500人以上いる。
また抽選に参加するためには毎回、案内がメールで来てから数時間以内に申し込まないといけない。当選か落選かは電話で知らせが来るが、抽選の様子は非公開。抽選に毎回参加はできるが、2回連続で当選はできない。落選した記者が次回は優先的に選ばれるからだ。
当選しても、記者クラブの幹事社の記者以外は、確実に質問できる保証はない。それでも6月17日の私は「めちゃくちゃラッキー」だった。質問ができたからだ。
一部の日本人からは失礼な記者と言われるかもしれないが、問題点を指摘しながら、こう聞かないといけないと私は判断した。
会見の経験を積んでいると思われるが
「総理は何度も『ワクチンを前提とせずに安心・安全な東京五輪が可能』と言いましたが、結局ワクチンなしには無理でした。でもワクチンがあっても100%の安全は確保できません。参加者の行動をGPSで管理するといっても、あくまでスマートフォンの位置情報で、実際の行動と異なります。結局、感染対策が不十分と思う専門家が多い。感染拡大や死者が出るリスクがあっても開催して大丈夫だと思う理由は何ですか。ノーと言えないことでしょうか。プライドでしょうか。または経済的理由でしょうか」
首相の答えにはがっかりした。「ノーでも、プライドでも、経済でもありません。日本においては、外国から来られた方への感染対策を講じることができるからです」
つまり、リスクをコントロールできると本人が思っているにすぎない。科学的根拠が乏しい。実のところ、いい答えが得られることは期待していなかった。約8年にわたって官房長官を務めた菅首相は記者会見の経験を積んでいると思われているが、記者が望むような本物の記者会見をしたことはないと言っても過言ではない。