韓国人留学生だった私しか知らない中曽根元首相の素顔
思えば首相就任直後の1983年、「留学生10万人計画」を打ち出したのも中曽根氏だった。各国からの留学生を受け入れ、知日派を養成することによって日本とそれぞれの国との友好関係を発展させようとの政策だ。実は私も日本の文部省から奨学金を得て留学に来ていたので、そもそもその政策の恩恵を受けていた。そう考えると、中曽根氏は自分の政策で増やしたからこそ、留学生には親切にし、丁寧に対応しようと決めていたのだろう。
「留学生10万人計画」はその後、福田康夫政権時の2008年に「留学生30万人計画」となり、今の安倍晋三政権にも引き継がれている。私のように、計画を決定したご本人から親切な対応を受けるのはさすがに特殊なケースだろう。ただ、日本に来た留学生がその後、日本についてどんな印象を持ち帰り、日本とどう関わり続けるかは、留学時代の経験や思い出の一つ一つに大きく左右される。
中曽根氏の留学生に対する思いや姿勢が、これからも日本社会に広く引き継がれていくことを願っている。
李 娜兀
NAOHL LEE
国際交流コーディネーター・通訳。ソウル生まれ。幼少期をアメリカで過ごす。韓国外国語大学卒、慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程単位取得(政治学専攻)。大学で国際交流に携わる。2人の子供の母。
<本誌2020年1月28日号掲載>
2020年1月28日号(1月21日発売)は「CIAが読み解くイラン危機」特集。危機の根源は米ソの冷戦構造と米主導のクーデター。衝突を運命づけられた両国と中東の未来は? 元CIA工作員が歴史と戦略から読み解きます。