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フェイクニュースは戦争を起こす?!
しかし、フェイクニュースはこれらのプロパガンダやデマとは異なるものとして扱うべきであろう。というのも、プロパガンダは国家が意図的に情報操作をして、その正統性を高める手段として用いられるという特徴があり、またデマは人々を不安に陥れるとか、混乱させることを目的として発信者の自尊心や功名心を原動力に行われるものである。これらとは異なり、フェイクニュースは経済的な動機で行われるもの、という特徴がある。
欧米、特にアメリカで話題となるフェイクニュースの多くは、ページビュー(PV)を稼ぐために記事が作られている。見出しが極端にセンセーショナルで、記事の中身はまったく裏取りや事実確認などないまま、でまかせやでっち上げの内容が羅列され、特定の人物を貶めたり、攻撃したりする内容にまとめられていることが多い。これらの記事は、伝統的なマスメディアの記事と形式的には似通っており、一見するとまっとうなニュース記事に見えるような作りになっている。また、時折、事実に基づいた記事を織り交ぜることで、どれがフェイクでどれが事実に基づく記事なのかが区別しにくくしている。
こうした手段が用いられるのは、それをフェイクだと思わせずに多くの人に信じ込ませ、それを拡散することでPVを稼ぐことを目的としているからである。PVが増えれば広告収入が連動して上がり、それが発信者の儲けとなるからである。そのため、フェイクニュースを発信する人は何らかの政治的な意図や世論操作を目指しているのではなく、純粋に金儲けのためにやっているケースも少なからずある。
昨年11月に掲載されたNew York Timesの「フェイクニュースのソーセージ工場の内部:全ては収入のため」という記事や、BBCが昨年12月に報じた「フェイクニュースで豊かになった町」といった記事ではジョージア(旧グルジア)やマケドニアなど、英語圏ではない場所で生活する若者が金のためにフェイクニュースを発信し、受けがよい記事をどんどん作り続けることで稼いでいる実態が明らかにされている。このように、デマやプロパガンダのようにはっきりとした政治的意図を持って事実ではない情報をまき散らす媒体も少なくないが、これらはある程度の政治的傾向が見られ、そのイデオロギーに染まった人であれば積極的に読むのであろうが、ある程度のリテラシーがあれば、そうしたプロパガンダやデマを避けることは可能である。それよりもわかりにくく、普通のウェブ上のニュース記事のように見えてしまう、金儲けを目当てとしたフェイクニュースはより見分けが難しく、それだけに信憑性のある記事として拡散してしまう可能性が高いのである。
ただ、現実には純粋な金儲けを目当てにするフェイクニュースと、政治的意図を持って世論操作しようとするデマやプロパガンダの中間的な存在も数多くある。特にトランプ大統領の上級顧問となったスティーブン・バノンという人物が率いていた「ブライトバート・ニュース」に代表される「オルタナ右翼(Alt-Right)」と呼ばれる媒体は、反エスタブリッシュメントや反リベラルのイデオロギーを掲げつつも、見た目はニュース媒体のような体裁をとり、全くのでっち上げによるフェイクニュースと、それなりに事実に基づいた記事とを混在させている。そのフェイクニュースの記事は外部から金儲けでやっている発信者から買うといったことも少なくない。そうしたハイブリッドのような媒体が、さらにフェイクニュースの拡散を可能にしている。
【参考記事】トランプ次期大統領とともに躍進する右派ニュースサイト「Breitbart」
フェイクニュースが拡散するメカニズム
上述したように、フェイクニュースはPVを目当てに、センセーショナルで人が信じてしまいそうな嘘を流すものである。しかし、もし人々がそうしたフェイクニュースに対して警戒心を持ち、事実だけを知りたいと思っていれば、こうした記事はつじつまが合わないところや、常識で考えて無理だと判断し、その嘘がばれる可能性もある。しかし、それらが嘘だとばれずに拡散され続けるのは、そこに「こういうニュースが読みたい」という受け手のニーズがあるからである。フェイクニュースを発信する側も、そうしたニーズをくみ取って、彼らに受け入れられやすいような内容の嘘を垂れ流すのである。
たとえば米大統領選の期間中に、ワシントンDCのピザ屋さんで民主党幹部が児童売春を行っているというフェイクニュースが流れ、それに憤った人物が実際にそのピザ屋さんを銃撃したという事件が起こった。これは民主党に対してよく思わない人たちや、エスタブリッシュメントに対して憎悪を抱く人たちをターゲットにしたフェイクニュースだったわけだが、それが本当のニュースだと信じられた結果起きた悲劇であった。
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