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「現代の奴隷」が20万人以上も...東南アジア特殊詐欺、虐待の日々から逃げ出す「唯一の脱出法」とは?

VICTIMS AND PERPETRATORS

2025年4月25日(金)17時09分
イバン・フランチェスキーニ(豪メルボルン大学講師)、リン・リー(ベネチア・カフォスカリ大学博士号候補生)、マーク・ボー(リサーチャー、東南アジア在住)

東南アジアの特殊詐欺拠点にある監視塔

監視塔には監視カメラが設置 IVAN FRANCESCHINI

被害者が犯罪者扱いされる

有刺鉄線付きの壁で囲まれ、厳重に警備された詐欺拠点にいったん足を踏み入れると、「サイバー奴隷」たちは目標を達成できなければ暴力の制裁を加えると脅されながら詐欺行為を強制される。

多くの場合、唯一の脱出法は救出活動の関係者が「身代金」、犯罪組織が「補償金」と呼ぶ多額の金を元締めに払うことだ。


国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の23年の報告書で引用された「信頼できる情報源」の推定によれば、ミャンマーでは少なくとも12万人、カンボジアでは10万人がオンライン詐欺を強制されている。

国連薬物犯罪事務所(UNODC)の同年の報告書は、詐欺拠点に監禁されている被害者の国籍は少なくとも40カ国に上ると指摘する。

強制的に働かされている人々の多くは、「プロ」と一緒に詐欺行為を強制されている。そのため加害者と被害者の境界線がぼやけ、被害者の特定が困難になる。

こうした状況の下では、当局の取り締まりで被害者が犯罪者扱いされかねず、本物の加害者は被害者を装って追及を逃れようとする。明らかに人身売買の被害者なのに宙ぶらりんな状態が長く続いたり、潔白を証明できずに犯罪者として扱われるケースも少なくない。

例えば、昨年後半にプノンペンで出会った視覚障害者の若い台湾人女性のケース。彼女は以前、ラオスの詐欺拠点内のコンビニで働いていたが、視力が低下したため、友人から首都ビエンチャンのもっといい「就業機会」を紹介された。

だが、そこへ向かう途中でパスポートを没収され、カンボジアに行くことを告げられて詐欺拠点に強制連行された。

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タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

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