「命より忠誠」ロシア軍をむしばむ暴力の連鎖...兵士はなぜ従い続けるのか
Have They Been Brainwashed?
大半の軍隊は戦闘のストレスに備えさせ、団結を養うために規定の範囲内で暴力を用いる。だがロシア軍では、とりわけ残酷なしごきの伝統が制度化し、軍の文化になっている。徴集兵の兵役初期に行われる「デダフシチーナ」だ。
新兵は暴力に耐え、やがて暴力を振るうことを学び、被害者と加害者の両方になる。先輩徴集兵による恐喝や殴打、レイプが報告されており、高官に売春を強制されたという証言もある。2000年代半ばに起きた悪名高い事件では、あまりにひどい虐待を受けた兵士が、両脚と性器の切断手術に追い込まれた。
人権活動家らによれば、ロシア軍内での多くの疑わしい自殺はしごきや脅迫と関連している。その一部は殺人を自殺に偽装した疑惑がある。
ウクライナ侵攻では、多くの新兵が訓練(とデダフシチーナ)を受ける間もなく、ほとんどすぐさま前線に送られている。それでも、根深い暴力の文化は変わらない。
暴力は服従を維持するメカニズムとして機能し続けている。ロシア軍は後方から自軍部隊を監視する督戦隊を配置し、退却しようとする兵士を殺害するなどして戦闘を強制しているという。不満を表明したり休暇を申請すれば「懲罰穴」や収容所に送られ、司令官に処刑された事例もある。
前線を離れた場所では、酔っぱらった兵士が民間人や仲間を殺害している。ロシア兵の「同士討ち」の規模は、まともに組織された軍隊では考えられないレベルだ。飲酒や不正行為を止めようとした同僚兵士を、集団で拷問して死亡させた事件も起きている。