ノーベル経済学者すら「愚挙」と断じるトランプ関税...トランプは何を勘違いしている?

ABSURD TARIFFS WILL BACKFIRE

2025年4月11日(金)12時50分
マイケル・ハーシュ(フォーリン・ポリシー誌コラムニスト)

外圧とトランプ関税の違い

多くの経済学者は、国内産業の保護には関税と並んで周到な産業政策が不可欠と考えているが、トランプはこの点も無視している。

経済政策研究所のハーシュは「関税は産業の発展を促す有効な手段だ」としつつも、「関税だけでは不十分で、多岐にわたる政策や補助金、税制上の優遇措置と組み合わせる必要がある」と指摘している。


英オックスフォード大学の経済学者ネーサン・レーンは、トランプ関税に付いて回る不確実性は本来の効果を相殺し、それ以上の悪影響をもたらす可能性があると考える。

「いったん国外に移した業務を米国内に戻すためには巨額の資本投下と長い時間が必要になる。途中で政策が変わる可能性があると思えば、投資意欲はそがれてしまう」とレーンは述べ、こう続けた。「民間部門が政府に期待できるものは何かを明確に示す必要がある。そこのところの明確さが正しい産業政策を実行する鍵となる」

一連の関税発表を受けて、3日にはいわゆる「マグニフィセント・セブン(巨大テック7銘柄)」の一員であるアップルの株価が急落し、全体の相場を押し下げた。このことは低賃金労働力だけでなく技術的・科学的なスキルも国外に依存する企業に、関税がもたらす長期的な冷え込み効果を反映している。

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