最新記事
ロシア

トランプの「2つの重大ミス」がプーチンの立場を強くした...手玉に取られないための「交渉術」とは?

How to Negotiate With Putin

2025年3月25日(火)18時55分
ローリー・ブリストウ(元駐ロシア英国大使)
プーチンはトランプとの電話会談でロシアのお家芸である交渉戦術に打って出た

プーチンはトランプとの電話会談でロシアのお家芸である交渉戦術に打って出た MAXIM SHEMETOVーPOOLーREUTERS

<功績を焦るトランプとの電話協議の結果、プーチンは優位に立った。このままではプーチンの思う壺だが...>

次第に詳細が分かってきた。ドナルド・トランプ米大統領とロシアのウラジーミル・プーチン大統領が3月18日に行った電話会談で示されたのは、ロシアのお家芸。自ら問題をつくり出し、その解決の代償は相手に求めるという交渉戦術だ。

今回提案されていたのは、ロシアによるウクライナの民間エネルギー施設への攻撃を30日間停止すること。代わりにウクライナは、ロシアのエネルギー施設への報復攻撃をやめる。さもないと、和平交渉を妨害しているという非難を受けることになる。


予想どおりロシアは、ウクライナの中立化や非軍事化の必要性も主張した。そうなれば、双方がエネルギー施設への攻撃を停止して全面的な停戦合意に至る前に、ウクライナは自衛手段を奪われる。しかも、ロシアが停戦合意を全面的に受け入れる可能性は事実上ゼロだ。

30日間の即時停戦というトランプの提案に対してプーチンは、戦争の「根本原因」を排除しなければ、いかなる合意も意味がないという考えを示していた。彼の言う根本原因とは何か。その点をより理解すれば、プーチンとの交渉とはどのようなもので、どう行うべきかという指針になる。

根本原因の第1は、ウクライナは独立国家ではなく、西側の「反ロシア的プロジェクト」だという自らの信念に関わるものだ。だから、ウクライナが西側寄りの民主主義国家になることは絶対に阻止する。この考えは、プーチンが内部の抵抗勢力を恐れている証拠でもある。

自動車
DEFENDERの日本縦断旅がついに最終章! 本土最南端へ──歴史と絶景が織りなす5日間
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

EU通商担当委員、米高官と会談 トランプ関税回避目

ワールド

米情報機関「中国は最大の脅威」、AIで米凌駕 台湾

ビジネス

NY外為市場=ドル/円軟調、関税導入巡る不透明感で

ビジネス

米国、輸出制限リストに70団体を追加 中国・イラン
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 3
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取締役会はマスクCEOを辞めさせろ」
  • 4
    「トランプが変えた世界」を30年前に描いていた...あ…
  • 5
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 6
    トランプ批判で入国拒否も?...米空港で広がる「スマ…
  • 7
    「悪循環」中国の飲食店に大倒産時代が到来...デフレ…
  • 8
    【クイズ】アメリカで「ネズミが大量発生している」…
  • 9
    老化を遅らせる食事法...細胞を大掃除する「断続的フ…
  • 10
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 5
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「レアアース」の生産量が多…
  • 10
    古代ギリシャの沈没船から発見された世界最古の「コ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中