アサドが消えても混乱続く...シリア国民が考える、復興に必要なもの
THE AFTERMATH OF A TRAGEDY
このことをアラウィ派の人に尋ねると「私たちの権利を守ってほしいというもので、(暫定政権への)反対デモではない」と言う。その言葉には、本当にそう思っている側面と、そうとしか言えない側面の両方があるのだろう。
これまで「勝ち組」だったアラウィ派が「負け組」になり、「負け組」だったスンニ派が「勝ち組」になった。パワーシフトが起きているのだ。これまでアサド政権を批判できなかったように、今は(より自由はあるものの)暫定政権を批判するのははばかられる。
取材中のある時、スンニ派とアラウィ派の人たちが和やかに会話をしていたと思ったら、スンニ派の人が「やっぱりアサドを支持しているんだろう?」と、揶揄するようにアラウィ派の人たちに言う場面にも遭遇した。アラウィ派の人たちは慌てて否定しながら気まずい顔をしていた。アラウィ派の人には、「アサド政権の恩恵を受けてきたとみられるスティグマ(烙印)が心配だ」と言う人もいた。
アラウィ派には、暫定政権やスンニ派から仕返しを受けることへの不安がある。一方でスンニ派もアサド政権の支配に苦しんだ。「私はアラウィ派のことは絶対信用しない。彼らは今もアサドに戻ってきてほしいと思っているはず」と語る人もいる。