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荒川河畔の「原住民」(25)

封建時代の「浪人」が現代のホームレスになった? 日本のホームレス史をたどる

2025年3月20日(木)11時05分
文・写真:趙海成

官僚になった者、警察官や商売人になった者がいた一方、軍人になった者もいた。朝鮮征服や日清戦争、後の第二次世界大戦と、大日本帝国のために尽力する元「浪人」は少なくなかっただろう。

つまり、浪人たちの運命は日本の国運に深く結びついており、帝国の崩壊と共に彼らも散り散りになったと言えよう。

封建時代の「浪人」と現代のホームレスは何が違うか

日本の歴史に登場する「浪人」と現代のホームレスを比較すると、何らかの理由で定職や家を失い「浮浪」するようになった点を除いては、両者をほとんど同列に論じることはできない。定義や背景、社会的影響など、いずれも大きな違いがある。

定義から言えば、「浪人」とは日本の封建時代に主家を失った武士を指す。彼らは収入源を失った後も、武士の身分とプライドはまだ維持していた。

一方、現代のホームレスは、定住所や収入源がない路上生活者を指す。彼らの多くは失業や破産、家庭内不和などで、正常な生活を維持できず、路上生活になった。

社会的地位と役割から言うと、浪人は主家を失い、特権がなくなっても、歴史の舞台から退くことはなかった。戦乱が頻繁だった時代、彼らはしばしば反乱や変革(倒幕運動、明治維新、西南戦争など)に参加し、政府や社会に多くの影響を与えた。

現代のホームレスはと言うと、元の職業はさまざまだが、ホームレスになると、住民票を失い、コロナ禍の補助金や選挙権・被選挙権など、市民としての一部の権利を失うことになる。したがって、彼らが政府や社会に与える影響力は小さい。

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