さらなる暗黒地域が...ミャンマー詐欺拠点「大救出劇」で浮き彫りになったサイバー詐欺産業の脅威
SOUTHEAST ASIA’S SCAM INDUSTRY “CRACKDOWN”
解放されても行き場がない
そうであれば、仮に8000人以上の人身売買被害者(国際サイバー犯罪の重要参考人でもある)が解放されても、彼らには行き場がない。
では必要な資金が確保でき、みんなが解放されたらどうなるか? タイ北部のターク県で活動する数少ないNGOは受け入れ準備を急いでいるが、現実問題としてそれだけの社会インフラはない。
そもそもターク県当局は、この問題に関して複雑微妙な役割を果たしてきた。犯罪拠点であることを承知しながら、人や機材が出入りするのを黙認し、そこから救出された人々の大多数が人身売買被害者であることを認めてもこなかった。
そうであればタイの中央政府が動くしかないが、こちらもあまり頼りにならない。人身売買被害者の置かれた状況を把握するための情報収集くらいはできるだろう。しかし、ミャワディの犯罪団地で行われている産業規模のサイバー詐欺を撲滅するために、世界各国の司法機関が必要とするだけの証拠を体系的に収集し、処理する能力も動機もタイ警察には欠けている。
タイには欧米の司法・警察関係者も多数駐在しているが、彼らもミャンマーとの国境を越えてくる人々(と、そのもたらす貴重な情報)にはあまり関心がないようだ。しかし中国は違う。中国政府にはこうした人々を取り戻し、彼らの持つ情報を得たい事情があるようだ。