月1000円で住める「1万ウォン住宅」が韓国でブーム 出生率0.75の危機への処方箋なるか
「1万ウォン住宅」のしくみと銅雀区の取り組み
1万ウォン住宅は、区が住宅オーナーと「チョンセ」契約を結んで転貸する方式を取っている。韓国の不動産賃貸契約は、入居時に家賃の10倍から20倍の保証金を払い込んで月々の家賃を払う「ウォルセ」と、保証金として売買価格の50%から80%に相当する預託金を払い込む代わりに家賃が要らないチョンセがある。チョンセ保証金はウォルセ契約の保証金と同様、契約終了時に返還される。
銅雀区の1万ウォン住宅の契約期間は2年で1回のみ延長可能となっていて、入居者はチョンセの5%に相当する保証金を払い込み最長4年間、家賃1万ウォンで居住できる。舎堂(サダン)にある64平方メートルの住宅の売買価格は3億2千万ウォン。入居者がチョンセで払い込む保証金は1600万ウォンだが、近隣ウォルセ住宅の保証金相場2000〜3000万ウォンを下回る。
過疎地から始まった全国的な広がり
「1万ウォン住宅」は韓国南西部にある全羅南道和順郡(チョルラナムド・ファスングン)の過疎化対策として始まった(道は日本の県、郡は町村に相当)。和順郡は2023年5月、過疎化に伴い空室となっていた20坪台の民間マンションを1戸あたり4800万ウォンのチョンセ契約で借り上げ、若者や新婚夫婦に月家賃1万ウォンで転貸する事業を開始した。まずは50戸を用意して募集したところ500人を超える応募があり、同年8月にさらに50戸を追加した。空室解消に加えて若者の増加が地域に活力をもたらした。郡は今後も老朽化したマンションを改良するなど400戸を供給する計画だ。
和順郡の成功にいち早く注目したのは全羅南道だ。過疎化が著しい4郡にそれぞれ50戸、合計200戸の1万ウォン住宅を供給した。人口減少地域に指定された16郡のうち9郡が名乗りを挙げ、道は学校や保育施設と働き口がある4郡を選定したという。契約期間は4年だが入居中に出産すると新生児1人につき3年ずつ延長可能で、最長10年居住できる。
全羅南道務安郡(ムアングン)は空き家を活用した「保証金100万ウォン、家賃1万ウォン」住宅を運営し、江原道太白市(テベクシ)も19歳以上49歳以下の新婚夫婦に39平方メートル規模の小型マンションを保証金441万ウォン、月家賃1万ウォンで提供するなど、自治体による「1万ウォン住宅」政策が韓国各地に広がっている。