DOGEの天下...「皇帝」マスクが6兆ドル決済システムを牛耳り、米政府をぶった切る

MUSK’S POWER GRAB

2025年2月28日(金)16時47分
ダーリア・リスウィック(司法ジャーナリスト)、マーク・ジョセフ・スターン(スレート誌司法担当)

本来なら議会が立法や召喚などの権限を行使してマスクの横暴にブレーキをかけ、支配権を奪い返すべきだ。しかし今の議会は動こうとしない。自らの法的義務の履行よりもトランプへの忠誠を優先する無気力な共和党議員に支配されているからだ。

国民に選ばれていない1人の男が勝手な命令で政府機関をつぶし、その職員を解雇し、そのグローバルな活動を止める権利を主張している。この事態を何と呼べばいいのか?


これは「憲政の危機」だとか「クーデター」だとか私たちが議論している間にも、事態は目の前で動いている。

クーデターと聞くと、私たちは市街地に戦車が繰り出す光景を思い出しがちだ。しかし現実のクーデターは軍服姿の男たちではなく、スーツ姿でもっともらしい書類を振りかざす「政府弁護団」によって実行に移される可能性が高い。

これは専制主義による民主主義の乗っ取りだ。かつてのロシアやハンガリー、ポーランドなどでそうだったように、そして今のアメリカで起きているように、立法府や司法府を無視した政策が目指すのは「コスト削減」でも「効率化」でもない。

それはまあ民間企業の敵対的買収に似ているが、大きな違いがある。切り捨てられるのは無能な経営陣ではなく、立憲民主主義の制度そのものだ。

大統領が自由選挙で政権を握ったからといって、脅威が薄れるわけではない。自己クーデターの本質は、ひとたび政権が樹立されると、その絶対的な支配に対するあらゆる抑制を消し去ることにある。

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