DOGEの天下...「皇帝」マスクが6兆ドル決済システムを牛耳り、米政府をぶった切る

MUSK’S POWER GRAB

2025年2月28日(金)16時47分
ダーリア・リスウィック(司法ジャーナリスト)、マーク・ジョセフ・スターン(スレート誌司法担当)
DOGEの天下...「皇帝」マスクが6兆ドル決済システムを牛耳り、米政府をぶった切る

アルゼンチン大統領から贈られたチェーンソーを披露するマスク(2025年2月20日) NATHAN HOWARDーREUTERS

<自己クーデター的な権力乱用で次々と行政府の解体を進めるイーロン・マスク。彼が率いる政府効率化省(DOGE)は、アメリカ政府をどこまで壊すのか?>

誰に選ばれたわけでもない1人の男が、アメリカ合衆国の政府機関をぶち壊そうとしている。

1カ月ほど前にホワイトハウスに復帰した大統領ドナルド・トランプのお墨付きを得た自分は無敵。そう信じる政商イーロン・マスクとその一味は、私たちメディアが伝え切れないほどのペースで行政府の解体を進めている。その影響は計り知れない。

捜査令状も議会の承認も要らないから、やりたい放題。政府機関の持つ機密資料や個人情報、その巨大な決済システムにも勝手にアクセスしているようだが、そんなことをする法的権限はどこにもない。


マスクは既存の政府機関に所属せず、上司はいない。それでいて計上済みの予算の執行を止めても、国家機密のセキュリティー条項に違反しても、議会の承認したグローバルな政府機関を閉鎖しても、自分にはそうする絶対的な権限があると信じているようだ。

連邦職員を粛清する先頭に立ち、人命を救う慈善団体を迫害し、公明正大に職務に取り組む公務員が暴挙の前に立ちはだかれば邪魔者として追い払う。

どう見ても憲法を無視した強引な権力奪取だ。しかも私たちメディアが報道し切れないほどの規模と速度で事を進めている。

マスクは昨秋の大統領選でトランプを勝たせるために3億ドル弱を投じた。だから今の自分には好きなように政府機関に押し入ってリストラする権限があると信じている。もはや彼は事実上の共同大統領。名目上の大統領は見て見ぬふりを決め込んでいる。

SDGs
使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが「竹建築」の可能性に挑む理由
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

再送-米政府、ウクライナ支援の見積もり大幅減額─関

ビジネス

米小売売上高、3月1.4%増 自動車関税引き上げ前

ワールド

トランプ大統領「自身も出席」、日本と関税・軍事支援

ワールド

イランのウラン濃縮の権利は交渉の余地なし=外相
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気ではない」
  • 3
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ印がある」説が話題...「インディゴチルドレン?」
  • 4
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 5
    【クイズ】世界で2番目に「話者の多い言語」は?
  • 6
    NASAが監視する直径150メートル超えの「潜在的に危険…
  • 7
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    「世界で最も嫌われている国」ランキングを発表...日…
  • 10
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 1
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 2
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 3
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止するための戦い...膨れ上がった「腐敗」の実態
  • 4
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 5
    「ただ愛する男性と一緒にいたいだけ!」77歳になっ…
  • 6
    投資の神様ウォーレン・バフェットが世界株安に勝っ…
  • 7
    コメ不足なのに「減反」をやめようとしない理由...政治…
  • 8
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 9
    まもなく日本を襲う「身寄りのない高齢者」の爆発的…
  • 10
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 7
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中