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「祖国には戻らない」若者たちの苦悩と選択──戦火のウクライナ、広がる兵役逃れの実態

DRAFT DODGING PLAGUES UKRAINE

2025年2月25日(火)10時33分
尾崎孝史(映像制作者、写真家)
徴兵逃れに走る若者たち「ウクライナが戦争で勝つことはない」【前編】

ドローン(無人機)操縦を明るいイメージで演出した兵士募集のポスター。背後には戦死者を表彰するパネルが並んでいた(24年6月) PHOTOGRAPHS BY TAKASHI OZAKI

<戦況が好転しない中、ウクライナ政府は兵士の追加動員を進めている。しかし、それに反発し、国外脱出を図る若者が後を絶たない。戦争の現実に直面した若者たちに迫られている選択とは>

「ウクライナが戦争で勝つことはない」と、強く感じる出来事があった。

開戦から1年半が過ぎた2023年の秋、首都キーウ(キエフ)の大統領府に近い通りでのことだ。ある政府機関での用事を済ませた筆者は、同行してくれたウクライナ人男性と2人で歩いていた。話題が筆者の所属する人道支援団体のことになった時、男性は立ち止まりこう言った。

「リーダーの電話番号を教えてくれ」


筆者はその場で通信アプリを開き、連絡先のページをスクロールした。リーダーのアカウントが見つかると、男性は「それだ、それ」と言って、電話番号を転送するよう求めた。温厚かつ知的で、私欲を感じさせるようなことのない30代の彼のテンションが急上昇したことに驚いた。

男性は地元の有力者と連絡を取り、有力者がリーダーと面会した。翌月、有力者は仲間が持ち寄った物品のチャリティー販売会を開催。

そして、売り上げの総額、日本円にして約6万円をリーダーに寄付した。後日、リーダーの部下が1人のフィクサー(陰の交渉人)を連れて有力者の前に現れた。目的は、男性の兵役登録を解除し、国外への脱出を可能にすることだ。

いくつかの資料を前に、準備すべき書類についてフィクサーが指南した。有力者の事務所で行われた打ち合わせは1時間ほど続いた。

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