最新記事
戦争

「祖国には戻らない」若者たちの苦悩と選択──戦火のウクライナ、広がる兵役逃れの実態

DRAFT DODGING PLAGUES UKRAINE

2025年2月25日(火)10時33分
尾崎孝史(映像制作者、写真家)

newsweekjp20250219045025-64a14ee4a398e19d6fc63c8700952a6dc4bee18b.jpg

筆者が男性から徴兵免除の相談を受けたキーウの通り。大統領府などが並び、厳重に管理されている(24年12月) TAKASHI OZAKI

その後、地元の徴兵事務所へ通うこと数回。24年6月、男性は順番待ちの若者でごった返す敷地から戻ってきた。「やっと受け取れた」と、男性はA4サイズの証書を手に有力者の元へ歩み寄った。念願の国外脱出への展望が開けた瞬間だった。

健康で体格がよく、郷土愛にあふれ、英語が話せて実務能力を持ち合わせたこの男性。彼のような人物が兵士となり、停戦後に祖国の復興を担うならウクライナの未来は明るいと筆者は思っていた。

しかし実際には、そんな若者に限って巧みに兵役を逃れ、国外脱出を計画していた。


ウクライナ国立銀行は1月30日、昨年は約50万人の国民が国外へ移住したと発表した。今年も20万人の流出が見込まれるという。停戦が実現し、18~60歳の男性に課せられた出国制限がなくなったなら、この国はどうなってしまうのだろうか。

3年前、ロシア軍による大規模侵攻が始まったとき、多くのウクライナ人が志願して入隊した。家族や故郷を守りたいとの思いが彼らを前線へと駆り立てた。その流れが止まったのは、激戦地バフムートでウクライナ軍の劣勢が伝えられた22年末頃だ。

「肉ひき機」とも表現される地上戦で死傷する兵士たちの映像や情報がSNSで拡散し、厭戦ムードが広まったからだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ポーランド、米と約20億ドル相当の防空協定を締結へ

ワールド

トランプ・メディア、「NYSEテキサス」上場を計画

ビジネス

独CPI、3月速報は+2.3% 伸び鈍化で追加利下

ワールド

ロシア、米との協力継続 週内の首脳電話会談の予定な
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 9
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 10
    「関税ショック」で米経済にスタグフレーションの兆…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中