トランプの「ディール外交」──ゼロサム的世界観を紐解く
A MORE ZERO-SUM WORLD
バイデンは何かにつけて、米政府は自由を守り普遍的な権利を擁護すると約束した。
しかし、22年夏にサウジアラビアを訪問した際は、ムハンマド皇太子とぎこちなくグータッチを交わした。
かつてバイデンが、反体制派のジャーナリスト、ジャマル・カショギの殺害にムハンマドが関与したとして、国際社会の「のけ者」にすべきと非難した相手だ。
理想主義より、石油市場におけるサウジアラビアの影響力のほうが重要なことがあらわになった。
最近では、パレスチナ自治区ガザにおけるイスラエルの戦争をバイデンが無条件に支持しているように見えたことは、アメリカは友人とそれ以外の人々に対して別々のルールがあるという世界の感情を助長した。
バイデンは縁故主義とも無縁ではなかった。2件の罪で有罪評決を受けた次男のハンターに恩赦は与えないと繰り返し否定していたが、昨年11月末に大統領として最後の感謝祭の休暇を家族で過ごした後、恩赦を決めたのだ。
またしてもバイデンの高邁な言葉が自分に跳ね返った。
トランプにはこのような問題は起きないだろう。そもそも世界が彼に寄せる期待値は低い。
人権や価値観、気候変動、移民への配慮に一切制約されることなく、どんなことをしてもアメリカ・ファーストを貫くと明言して選挙で勝利した今、厚かましいほどアメリカの利益を追求する免罪符を得たつもりだろう。
世界はこれを大幅な軌道修正と感じないだろう。代わりに、旧来の世界秩序はもはや目的に適さないという「直感」を確認するはずだ。

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