次期トランプ政権は不法移民の強制送還で自分の首を絞める
DEPORTATION DEBACLE
不法移民は働き手であり消費者でもある。そんな人たちをごっそり追い出せば、米経済に直接的・間接的影響が及ぶのは目に見えていると、取材に対してエコノミストらは口をそろえる。
「何百万もの人たちを大量送還すれば、アメリカ人労働者の雇用機会は増えるどころか減り、アメリカの経済成長は鈍り、物価は急上昇し、財政赤字が増えるため納税者の負担は増すだろう」と、ジョージ・メイスン大学のマイケル・クレメンス教授(専門は国際移住)は言う。
トランプは大量送還を実施するためには、非常事態宣言を発令し軍を投入することも辞さないと明言している。1期目のトランプ政権で移民政策を取り仕切り、次期政権では政策担当大統領次席補佐官を務めるとみられるスティーブン・ミラーはアメリカ中の職場の強制捜査を監督し、送還対象者を収監する「巨大な収容施設」を(おそらくはテキサス州に)建設すると述べている。
1期目のトランプ政権では移民関税執行局(ICE)の局長代理を務め、2期目には国境管理を仕切ることになるトム・ホーマンはFOXニュースの番組で「ICEの手枷(てかせ)を外し」、手段を選ばず不法移民の流入を阻止できるようにすると語った。
だが大量送還には巨額の資金がかかる。バンスは年間100万人の送還を示唆しているが、それだけの数の不法移民を逮捕、拘束し、法的手続きを取って本国に送還するには、毎年およそ880億ドルの予算が必要になると、移民支援団体・米国移民評議会は見積もっている。