最新記事
安全保障

トランプの「領土奪取」は暴論にあらず。グリーンランドとパナマ運河はなぜ放置できないのか

A UNIPOLAR WORLD?

2025年1月15日(水)18時19分
練乙錚(リアン・イーゼン、経済学者)

トランプは2期目の外交政策として、3つの基本戦略を固めた可能性が高い。すなわち①アメリカを強化する。②ヨーロッパでは左寄りの政府を威嚇してアメリカに従わせる一方で、右派が政権の座に就くのを後押しし、ロシアを中国から引き離す。③孤立して劣勢に立たされた中国をたたく。それによって21世紀版パックス・アメリカーナ(アメリカによる平和)を実現しようというのだ。

だが、トランプのアメリカに、それを実現する手段はあるのか。


長年にわたり世界は多極化しているといわれてきた。だが、実際にはアメリカ以外の勢力が「極」と呼べるほど強力になることはなかった。EUのGDPは中国と同レベルで、アメリカの3分の2程度だ。ロシアのGDPはブラジルよりも少ない世界11位。さらに、アメリカの労働者は世界でも指折りの生産性を誇り、中国の労働者の6.8倍にもなる。

こうしたことは全て、世界が再びアメリカ一極の時代を迎えつつあることを明確に示している。トランプが大胆にもグリーンランドやパナマ運河に食指を動かすのは、その表れかもしれない。そしてトランプには、その壮大な構想を実現するチャンスが巡ってきているのかもしれない。

もちろん、それが世界にとって良いことかどうかは、大いに議論の余地があるが。


20250408issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年4月8日号(4月1日発売)は「引きこもるアメリカ」特集。トランプ外交で見捨てられた欧州。プーチンの全面攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

国連、雨季到来前に迅速な援助呼びかけ 死者3000

ビジネス

日経平均は続伸で寄り付く、米関税警戒で伸び悩みも

ビジネス

関税の影響を懸念、ハードデータなお堅調も=シカゴ連

ビジネス

マネタリーベース、3月は前年比3.1%減 7カ月連
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 10
    トランプが再定義するアメリカの役割...米中ロ「三極…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中