AI時代にこそ必要な「非認知能力」の伸ばし方とは?笑い飯・哲夫と考える、これからの教育に必要なこと

2024年12月25日(水)11時30分
※JICAトピックスより転載

newsweekjp20241216115542-154ead32796a3964edc48cd3068bb69a3bc3d686.jpg

写真中央:田口 晋平(たぐち・しんぺい) JICA人間開発部 課長。公立中学校教諭、JICA海外協力隊(南アフリカ)などを経て、2013年JICA入構
写真右: 伊藤綱貴(いとう・つなき)  JICA広報部。2014年JICA入構。本企画の進行役を務める

世良 日本の数学も良い学び方なんですね。

田口 そうなんです。JICAは、そのような日本の問題解決型学習を取り入れた、途上国の理数科教育の質を向上させる協力を行なっています。そのためには先生方の教える技術も必要になりますので、学校の先生へ向けた研修も行っています。

伊藤 先生というと、哲夫さんの塾ではお笑い芸人の方が教えているそうですね。

哲夫 そうなんです。芸人は面白いことを言うのが性ですから、子どもは笑いながら楽しんで勉強できます。そして、芸人にとって子どもは一番笑かすのが難しいお客さん。簡単な言葉で子どもをどう笑かすか考えることで話芸が向上するんですね。だから、お互いに成長できるwin-winの関係性が成り立っているなと思います。

日本式「TOKKATSU」で非認知能力が向上

世良 最近はAIが教育現場で使われていますが、それによって子どもたちに求められる能力も変わるのでしょうか。

お茶の水女子大学教授の浜野隆さん(以下、浜野) 暗記や計算、言語生成はAIが代替する部分もあると思います。しかし一方で、どれだけAIが進化しても「何か困難に直面しても最後までやり抜く」「失敗を跳ね返す」など人間が主体にならざるを得ない場面があります。そういった能力を「非認知能力」と呼びます。非認知能力が上がると学業面や仕事での成功につながり、さらには健康にも良い影響があると言われています。そして意外かもしれませんが、日本の学校教育では非認知能力を大切にしています。いわゆるお勉強だけではなく、掃除や給食、日直、班活動といった「特別活動」ですね。日本では明治時代から、学校は勉強だけでなく、全人的な発達を促す場だと考えられてきました。

newsweekjp20241216115733-60fc45d59a5e0ccbea0fdbc3812515e609b0d774.jpg

浜野 隆(はまの・たかし) お茶の水女子大学基幹研究院教授。国際協力や教育政策、子どもの非認知能力に詳しい

田口 日本の特別活動は海外からも注目を集めており、JICAは非認知能力を高める特別活動「TOKKATSU」の実践協力をエジプトやマレーシアで実施しています。マレーシアでは、TOKKATSUを導入していない学校に比べ、子どもの自尊心やリーダーシップ、やる気が高まったという成果が出ています。

浜野 日本は学校教育以外にも家庭や地域社会など、さまざまな場所で非認知能力を伸ばす機会があります。非認知能力は急激に伸びるものではなく、いろんな経験をする中で少しずつ形成されるのですが、その中で摩擦がある程度あった方がいいと言われています。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米ミサイル防衛「ゴールデン・ドーム」、スペースXが

ビジネス

エクイノール、NY州沖風力発電施設の建設中止 米政

ワールド

中国主席がカンボジア入り、歴訪最後も「保護主義」反

ワールド

中国、米に相互尊重を要求 貿易交渉の開始巡り膠着続
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気ではない」
  • 3
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判もなく中米の監禁センターに送られ、間違いとわかっても帰還は望めない
  • 4
    【クイズ】世界で2番目に「話者の多い言語」は?
  • 5
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 6
    米経済への悪影響も大きい「トランプ関税」...なぜ、…
  • 7
    紅茶をこよなく愛するイギリス人の僕がティーバッグ…
  • 8
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 9
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 10
    金沢の「尹奉吉記念館」問題を考える
  • 1
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 2
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 3
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止するための戦い...膨れ上がった「腐敗」の実態
  • 4
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 5
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 6
    「ただ愛する男性と一緒にいたいだけ!」77歳になっ…
  • 7
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 8
    コメ不足なのに「減反」をやめようとしない理由...政治…
  • 9
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 10
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 9
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中