AI時代にこそ必要な「非認知能力」の伸ばし方とは?笑い飯・哲夫と考える、これからの教育に必要なこと
写真右: 伊藤綱貴(いとう・つなき) JICA広報部。2014年JICA入構。本企画の進行役を務める
世良 日本の数学も良い学び方なんですね。
田口 そうなんです。JICAは、そのような日本の問題解決型学習を取り入れた、途上国の理数科教育の質を向上させる協力を行なっています。そのためには先生方の教える技術も必要になりますので、学校の先生へ向けた研修も行っています。
伊藤 先生というと、哲夫さんの塾ではお笑い芸人の方が教えているそうですね。
哲夫 そうなんです。芸人は面白いことを言うのが性ですから、子どもは笑いながら楽しんで勉強できます。そして、芸人にとって子どもは一番笑かすのが難しいお客さん。簡単な言葉で子どもをどう笑かすか考えることで話芸が向上するんですね。だから、お互いに成長できるwin-winの関係性が成り立っているなと思います。
日本式「TOKKATSU」で非認知能力が向上
世良 最近はAIが教育現場で使われていますが、それによって子どもたちに求められる能力も変わるのでしょうか。
お茶の水女子大学教授の浜野隆さん(以下、浜野) 暗記や計算、言語生成はAIが代替する部分もあると思います。しかし一方で、どれだけAIが進化しても「何か困難に直面しても最後までやり抜く」「失敗を跳ね返す」など人間が主体にならざるを得ない場面があります。そういった能力を「非認知能力」と呼びます。非認知能力が上がると学業面や仕事での成功につながり、さらには健康にも良い影響があると言われています。そして意外かもしれませんが、日本の学校教育では非認知能力を大切にしています。いわゆるお勉強だけではなく、掃除や給食、日直、班活動といった「特別活動」ですね。日本では明治時代から、学校は勉強だけでなく、全人的な発達を促す場だと考えられてきました。
田口 日本の特別活動は海外からも注目を集めており、JICAは非認知能力を高める特別活動「TOKKATSU」の実践協力をエジプトやマレーシアで実施しています。マレーシアでは、TOKKATSUを導入していない学校に比べ、子どもの自尊心やリーダーシップ、やる気が高まったという成果が出ています。
浜野 日本は学校教育以外にも家庭や地域社会など、さまざまな場所で非認知能力を伸ばす機会があります。非認知能力は急激に伸びるものではなく、いろんな経験をする中で少しずつ形成されるのですが、その中で摩擦がある程度あった方がいいと言われています。
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