最新記事
モザイク国家

暫定政権下のシリア、キリスト教徒が礼拝 学校も再開

2024年12月16日(月)10時58分
日曜礼拝に参加したシリアのキリスト教徒

12月15日、シリアのキリスト教徒らは、アサド政権崩壊後で初めてとなる定期的な日曜礼拝に出席した。15日、ラタキアの教会で撮影(2024年 ロイター/Umit Bektas)

シリアのキリスト教徒らは15日、アサド政権崩壊後で初めてとなる定期的な日曜礼拝に出席した。アサド政権打倒を主導して暫定政権を樹立した「シャーム解放機構」(HTS)は、シリアの少数民族グループに対して生活様式が危険にさらされることはないと訴えている。

アサド政権下では、キリスト教徒を含めた宗教少数派が自由に礼拝をしていた。

首都ダマスカスのキリスト教徒が多いバブ・トゥーマ地区の通りは15日午前、教会から戻ってきた礼拝者で埋め尽くされた。一部の人々は警戒心をあらわにした。

ある住民はミサに出た後、「私たちはまだおびえている」と語り、HTSによる支配後、ほとんど家から出ていないとして「情勢は流動的だ」と漏らした。

シリアにはキリスト教徒、アルメニア人、クルド人、イスラム教シーア派といった民族、宗教の少数派が住んでいる。イスラム教スンニ派が多数を占めるシリアにあって、アサド一族はイスラム教シーア派から派生した少数派のアラウィ派に属す。

レバノンの治安当局者はロイターに対し、新たな支配者による迫害を恐れるシリアの数万人のシーア派イスラム教徒がシリアからレバノンへ先週避難したと明らかにした。

アラブ諸国とトルコ、米国、欧州連合(EU)が14日にヨルダンで開いた会合では、シリアの少数派民族の保護が重要な関心事となった。ブリンケン米国務長官は、少数派の権利を尊重し、「テロリスト集団の拠点」とならない包括的な政府を支持すると述べた。

シリアの暫定政権による学校再開の命令を受け、子どもたちは15日に教室へ戻った。当局者らによると、大部分の学校が15日に再開した。だが、情勢不安から子どもたちを授業に行かせない親もいた。

15日午前、ダマスカスの男子高校では、教頭が暫定政権によって採用された国旗を掲げると拍手喝采を浴びた。

ある生徒は「私は楽観的で、とても喜んでいる」とし、「以前は徴兵されるのではないかとおびえながら道を歩いていた。検問所に着くと怖かった」と振り返った。



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2024トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


20241217issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年12月17日号(12月10日発売)は「韓国 戒厳令の夜」特集。世界を驚かせた「暮令朝改」クーデター。尹錫悦大統領は何を間違えたのか?

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


SDGs
「ステハジ」が描く脱プラ未来...マイボトルでギネス記録、給水が新たな選択肢に
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ウクライナ軍、東部防衛司令官を交代 ロシアの急進撃

ワールド

韓国憲法裁、尹大統領の弾劾審理開始へ 当局は週内出

ワールド

政治改革法案で会期延長含み、来年度予算案は27日に

ワールド

豪州、中銀金融政策委に新メンバー2人指名 政策の継
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:韓国 戒厳令の夜
特集:韓国 戒厳令の夜
2024年12月17日号(12/10発売)

世界を驚かせた「暮令朝改」クーデター。尹錫悦大統領は何を間違えたのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いするかで「健康改善できる可能性」の研究
  • 2
    ウクライナ「ATACMS」攻撃を受けたロシア国内の航空施設...「内部映像」が示すミサイルの威力
  • 3
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが物議...事後の悲しい姿に、「一種の自傷行為」の声
  • 4
    メーガン妃は「ブランドのバッグを喜んで受け取る人…
  • 5
    SNSで話題の「恐怖映像」に「心臓とまりそう!」の声…
  • 6
    電池交換も充電も不要に? ダイヤモンドが拓く「数千…
  • 7
    「どんなゲームよりも熾烈」...ロシアの火炎放射器「…
  • 8
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 9
    「オメガ3脂肪酸」と「葉物野菜」で腸内環境を改善..…
  • 10
    爆発と炎上、止まらぬドローン攻撃...ウクライナの標…
  • 1
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼンス維持はもはや困難か?
  • 2
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達した江戸の吉原・京の島原と並ぶ歓楽街はどこにあった?
  • 3
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式多連装ロケットシステム「BM-21グラート」をHIMARSで撃破の瞬間
  • 4
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 5
    男性ホルモンにいいのはやはり脂の乗った肉?...和田…
  • 6
    「男性ホルモンが高いと性欲が強い」説は誤り? 最新…
  • 7
    「どんなゲームよりも熾烈」...ロシアの火炎放射器「…
  • 8
    電池交換も充電も不要に? ダイヤモンドが拓く「数千…
  • 9
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 10
    2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼ…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 9
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 10
    2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中